年金シニアプランコラム等

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日本の中高年者は
、 本人が受給する予定の老齢年金月額が
いくらになるかを
知って いるか:
「くらしと仕事に関する中高年インターネット調査」の調査結果(その
1
20
21 年 10 月 6 日
高山
憲之 公益財団法人 年金シニアプラン総合研究機構理事長・一橋大学名誉教授
1.
問題の所在
2019 年 5 月、日本では、いわゆる「老 後 資金 2000 万円 不足 問題」が提起され、さまざま
な議論が展開された (注 。問題提起にあたって金融庁レポートは、「老後の生活設計にあ
たり、受給予定の老齢年金月額(公的年金)を各当事者は皆、正確に把握している」と 暗黙
裡に 想定していた ふしがある 。
この想定は現実的かつ妥当である、と言えるだろうか。 本稿では、 2021 年 1 月 13 日、 14
日の両日に実施された「くらしと仕事に関する中高年インターネット調査」 (注 2 の調査結
果を利用して、その ような想定の是非 を明らかにする。結論を先に述べると、老齢年金 の受
給が間近に迫っている 60 74 歳の中高年者 (調査時点では未受給者 であっても、その答
えは 概ね No ”であ った 。以下、上記調査における関連質問と回答結果を 3 つ 紹介したい。
2.設問・回答等
2.1
年金受給見込み額
設問: あなた本人の老齢年金受給見込み額 は 月額 で いくらになるか、分かりますか。
回答: はい 29 いいえ 71

老齢年金の受給が間近 に迫っている中高年者に対する設問。 有効回答は 1092 サンプル)
筆者コメント: 受給見込み額は 、 ねんきん定期便に記載されてい る 。それを開封してい
ない人 、 または、開封しても、その内容を丁寧に読んでいない人 、 が 7
割強 に及んでい た 。公的年金の受給 月 額は 各自が 老後生活 を 設計 する際、
不可欠となるデータである 。それが不明のまま では 、 適切な 老後設計 が
可能になるとは思えない 。
2.
2 老齢年金の受給開始 月
設問: 老齢年金の 支給開始 年齢 法定 年齢) に到達した場合、支給される老齢年金給付
は本人の誕生月と同じ月の分からです。この記述は正しいでしょうか(各月 1 日
生まれの人を除く。繰り上げ受給も繰り下げ受給もしない場合)。
回 答: はい 52 いいえ 48
(老齢年金の受給が間近に迫っている中高年者に対する設問。有効回答は
10 85 サンプル)
筆者コメント: 現実は、本人の誕生月の翌月分から( たとえば、 4 月 2 日 生まれの人は 5
(注1)
この問題に関する筆者の考え方については、高山( 2019 )を参照されたい。
(注
2 この調査の概要は後述(付論)のとおりである。
2
月分から
月分から))でであるある。ただし、。ただし、各月各月11日生まれの人は本人の誕生月分からで日生まれの人は本人の誕生月分からであるある)。つまり、「はい」という回答は不正解であり、不正解の人が)。つまり、「はい」という回答は不正解であり、不正解の人が回答者回答者の約半分となっていたの約半分となっていた。。
2.
2.33 老齢年金の受給開始年齢老齢年金の受給開始年齢:選択の自由度:選択の自由度
設問:設問: 公的年金(公的年金(老齢年金老齢年金))の受給開始年齢の受給開始年齢はは、、6060~~7070歳の間で各自が自らの判断で自歳の間で各自が自らの判断で自由に選択することができます。由に選択することができます。あなたは、あなたは、このことを知っていますか。このことを知っていますか。
回答:回答: はいはい 7575%% いいえいいえ 2525%%
(老齢年金の受給が間近に迫っている中高年者に対する設問。有効回答は
(老齢年金の受給が間近に迫っている中高年者に対する設問。有効回答は10921092サンプル)サンプル)
筆者コメント:筆者コメント: 公的年金知識公的年金知識ののイロハとも言うべき設問でイロハとも言うべき設問であるある。。回答者の回答者の44人人にに11人は、人は、このこの事実事実を知を知らなかったらなかった。なお、。なお、20202222年年44月月からは選択幅がからは選択幅が6060~~7575歳に歳に拡大され拡大されるる。。
3.含意
3.含意
日本における公的年金の制度内容は総じて複雑であり、それを正確に理解することは必ず日本における公的年金の制度内容は総じて複雑であり、それを正確に理解することは必ずしも容易ではない。ちなみに、自分が老後に受けとる年金受給額が月額でどの程度になるかしも容易ではない。ちなみに、自分が老後に受けとる年金受給額が月額でどの程度になるかを自分で計算できる人は絶対少数にとどまっている(とくに、厚生年金加入者の場合)を自分で計算できる人は絶対少数にとどまっている(とくに、厚生年金加入者の場合)。分か。分かりやすさ最優先の制度解説が今、求められており、ねんきん定期便や、ねんきんネット情報りやすさ最優先の制度解説が今、求められており、ねんきん定期便や、ねんきんネット情報等を制度加入者・受給者それぞれの立場に立って、親しみやすく、かつ、いっそう有用なも等を制度加入者・受給者それぞれの立場に立って、親しみやすく、かつ、いっそう有用なものに改める必要性が高い。のに改める必要性が高い。
付論:「くらしと仕事に関する中高年インターネット調査」(
付論:「くらしと仕事に関する中高年インターネット調査」(20212021年年11月実施)の調査概要月実施)の調査概要
統計調査会社のインターネット調査モニターとして登録されている日本人男女
統計調査会社のインターネット調査モニターとして登録されている日本人男女30003000人に人に対する調査。有効回答者数の年齢別割付は男女共通であり、それぞれ対する調査。有効回答者数の年齢別割付は男女共通であり、それぞれ6060~~6464歳層歳層600600サンサンプル、プル、6565~~6969歳層歳層600600サンプル、サンプル、7070~~7474歳層歳層300300サンプル。年齢はサンプル。年齢は20212021年年44月月11日時点日時点表示。表示。地域別ないし職業別のサンプル割付は、いずれも、しなかった。調査の委託元は、年地域別ないし職業別のサンプル割付は、いずれも、しなかった。調査の委託元は、年金シニアプラン総合研究機構。金シニアプラン総合研究機構。
参考文献
参考文献
金融庁レポート
金融庁レポート((20120199)「)「高齢化社会における資産形成・管理高齢化社会における資産形成・管理」」金融審議会市場ワーキン金融審議会市場ワーキング・グループ報告書(案)グ・グループ報告書(案)
高山憲之(
高山憲之(20192019)「老後資金)「老後資金20002000万円不足問題をめぐって」共済新報、万円不足問題をめぐって」共済新報、1111月号月号 http://takayamahttp://takayama–online.net/Japanese/pdf/media/magazine/kyosai201911.pdfonline.net/Japanese/pdf/media/magazine/kyosai201911.pdf