年金シニアプランコラム等

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配偶者が受給中の老齢年金月額を把握している中高年者は56%:
「くらしと仕事に関する中高年インターネット調査」の調査結果(その2)
2021年10月12日
高山 憲之(公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構理事長・一橋大学名誉教授)
1.問題の所在
日本における有配偶世帯の場合、老後の生活は夫婦が一緒になって世帯単位で設計する。これが、これまでのところ一般的だったと思われる。無論、共働きが当たり前となった現在、中年以下の世代では、夫婦一緒ではなく、夫と妻がそれぞれ単独に老後の生活を設計するという事例が増えている可能性が大きい。
現在の中高年者(60~74歳)は、配偶者のことを、どこまで把握しているのだろうか。本稿では、手始めに、まず、配偶者の老齢年金関連事項について調べてみることにした。利用したデータは「くらしと仕事に関する中高年インターネット調査」(2021年1月実施。注1)である。以下、この調査における関連質問と回答結果を4つ紹介する。
2.設問・回答等
2.1 配偶者は老齢年金受給者か
設問: あなたの配偶者は現在、国からの老齢年金を受けとっていますか。
回答: はい 52% いいえ 39% 分からない 9%
(有配偶の中高年男女に対する設問。有効回答は2265サンプル)
筆者コメント: 配偶者が老齢年金受給中か否かを知らない中高年者本人が10人に1人弱の割合でいた。
2.2 配偶者が受給している老齢年金月額
設問: あなたの配偶者が受給している老齢年金は月額でいくらであるか、あなたは分かりますか。
回答: はい 56% いいえ 44%
(配偶者が老齢年金を受給している中高年男女に対する設問。有効回答は1184サンプル)
筆者コメント: 配偶者が老齢年金受給者であることを知っていても、その受給月額がいくらであるかを把握していない中高年者が、4割あまりに及んでいた。
2.3 配偶者の老齢年金受給開始年齢
設問: あなたの配偶者は現在、国からの老齢年金を受給していませんが、それを何歳から受給しようとしているかに関する配偶者の考え方を、あなたは知っていますか。
回答: はい 68%(「もう、決めている」36%、「まだ、決めていない」32%)
いいえ 31%
(配偶者が老齢年金未受給の中高年男女に対する設問。有効回答は888サンプル)
(注1) この調査の概要は高山(2021)の付論に記載されている。
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筆者コメント: 3割強の中高年者は、いつから老齢年金を受給し始めるかに関する配偶者の考え方を知っていなかった。
2.4 配偶者の老齢年金受給見込み額
設問: あなたの配偶者は現在、国からの老齢年金を受給していません。その老齢年金受給見込み額が月額でいくらになるか、あなたは分かりますか。
回答: はい 18% いいえ 82%
(配偶者が老齢年金未受給の中高年男女に対する設問。有効回答は888サンプル)
筆者コメント: 本人分の年金受給見込み額が分からない中高年者は70%強となっていたが(高山(2021)参照)、配偶者分のそれが分からない人は一段と多く、80%強に達していた。
3.含意
60~74歳の中高年夫婦の場合、その大半は配偶者が老齢年金を受給しているか否かを承知していたものの、その受給月額がいくらであるか(あるいは受給見込み額がいくらとなるか)を把握していない人の割合は半分に近かった(受給見込み額の場合は圧倒的多数の80%強)。調査時点において、配偶者が老齢年金を受給していない中高年夫婦に限定すると、配偶者がそれを何歳から受給しようとしているか、そのことを承知している人の割合は、3人に1人強に留まった。
お金の問題となると、夫婦であっても、それぞれの機微に触れることが少なくない、ということなのだろうか。老後の生活を設計するにあたって、そのベースとなる老齢年金の受給月額や、その受給開始時期に関する情報を、配偶者と共有していないという中高年夫婦が少なくなかったようである。
中高年夫婦の実態については調べたいことが他にもいくつかある。ただ、それらを調べることは、別の機会に譲る。
参考文献
高山憲之(2021)「日本の中高年者は、本人が受給する予定の老齢年金月額がいくらになるかを知っているか:“くらしと仕事に関する中高年インターネット調査”の調査結果(その1)」年金シニアプラン総合研究機構、コラム欄、2021年10月6日.
https://www.nensoken.or.jp/wp-content/uploads/nsc08.pdf