財団法人 年金シニアプラン総合研究機構は、年金制度と年金資金運用および年金生活に関する専門研究機関です

研究の基本的な考え方

(財)年金シニアプラン総合研究機構では、当機構の研究の中期的方向を明らかにし、広くご理解をいただくことを目的として、以下のとおり「年金シニアプラン総合研究機構の今後の事業運営について-中期ビジョン-」を策定しました(第105回理事会(平成17年6月開催)資料)。

年金シニアプラン総合研究機構の今後の事業運営について
-中期ビジョン-

1.はじめに

今後わが国は世界に類を見ない超高齢社会を迎え、年金に対する国民の関心は更に高まることが予想される一方で、年金を巡る論議は混乱の様相も見られ、また、国民の間からは年金に対する信頼を危惧する声も公然と出始めている。一方、これからの人口減少時代の到来に伴って経済成長の一層の低下を背景に市場運用の困難性を指摘する声もある。このような環境の中にあって、この分野の専門研究機関としての年金シニアプラン総合研究機構の果たすべき役割は益々大きなものとなっている。

この中期ビジョンは、こうした状況を踏まえて、今後、当機構の果たすべき役割や事業運営の方向を明確にするため、策定したものである。この中期ビジョンの趣旨及び策定の経過は次のとおりである。

(1)
年金シニアプラン総合研究機構は、昭和53年に年金制度研究開発基金として発足、平成2年に年金総合研究センターの名称に改称し、平成18年7月12日に現在の名称に改称している。平成13年に「研究の基本的考え方」を策定し、以来これに沿って年金制度や年金資金の運用に関する各種の調査研究をはじめとして、シンポジウムやフォーラムの開催、機関誌の定期発行等を通じて、この分野のさまざまなテーマについての理論面、実証面の分析等の成果を積み重ねてきた。
(2)
一方、国民の老後保障の中核を担う公的年金制度や企業年金制度等の年金システムは、本格的な少子・高齢社会を迎えて、国民生活やマクロ経済にとって、極めて大きなウェートを占めるとともに、最も重要な社会インフラとなっている。また、年金制度や年金運用は、社会的な関心が高く、いまや、国民的テーマとなっており、多様な論点について、客観的な分析に基づいた冷静な議論が求められている。
(3)
こうしたわが国年金を取り巻く環境を考慮すれば、年金制度や年金運用に関する、非営利の専門研究機関として、当機構の果たすべき役割には大きいものがあると考えられる。そこで、わが国において年金の果たすべき役割がより一層重要となっていることや、平成13年以降の年金制度の改正や運用技術の進展等に鑑み、今後、当機構の事業展開の方針を明確にするためこの中期ビジョンを策定するものである。したがって、本ビジョンは、平成13年に策定した「基本的考え方」に代わって今後各年度の事業計画を立案する際の指針となるものである。
(4)
この中期ビジョンは、当機構の運営委員会において議論が行われ、取りまとめられたものである。なお、このビジョンは、今後、3~5年程度を想定して策定したものであるが、年金制度等をめぐる状況は、かなり流動的な面もあることから、当機構がそうした変化に伴う新たなテーマについて柔軟に対応できるよう、必要に応じて、見直していくこととする。

2.当機構の果たすべき役割と目指すべき方向

当機構が、国民のニーズを考慮しつつ、年金制度等をめぐるさまざまなテーマに関して、研究機関としての客観的な立場から分析を行い、その成果に基づいて、政策提言をはじめ、的確な情報発信を行っていくことは、極めて重要な意味を持っている。また、当機構が、その性格を活かして、年金制度等に関する研究を促進していくための環境づくりを進めていく意義も大きいものがある。そのことを踏まえ、今後当機構の果たしていくべき役割と目標とすべき方向は次のとおりとすべきである。

当機構は、年金制度及び年金運用に関する非営利の専門研究機関として、この分野の社会的ニーズを考慮したさまざまなテーマや論点について、客観的、中立的な立場で学術的に高いレベルでの研究に取り組み、必要に応じて政策提言等を行う。また、その成果を対外的に発信することにより、この分野の専門性の向上やより実りある議論を深めていくことに寄与する。これらを通じ、この分野の最も権威ある研究機関としての地位を確立することを目指す。

年金制度や年金運用の経済社会に占める影響は今後一層大きなものとなることに鑑み、年金制度等の果たしている役割や機能について的確に評価した上で、年金制度等に関する正しい知識の普及に努め、この分野の建設的、現実的な国民世論の環境の形成に寄与していく。

年金制度や年金運用については、欧米先進国の取り組みがわが国に貴重な示唆を与えることから、先進国の年金政策の動向や主要年金基金の投資プログラムの情報を収集し、蓄積する。また、世界で最も高齢化が進むわが国の対応に関して、世界各国に対して、情報発信を行っていく。これらを通じ、国際的な情報の発信、普及の面でも高い評価を得ることを目指す。

この分野の研究を活性化し、専門性や学術レベルの向上を図っていくため、内外の関係の研究機関や学会、研究者等の研究主体間のネットワークの中核として、積極的な役割を果たしていく。また、若手の研究者に対する活躍の場の提供等この分野の研究を促進していくための環境づくりを進めていく。これらを通じ、年金に関係する様々な研究機関や研究者等の開かれた自由な意見交換の場を構築していく。

3.研究戦略

当機構が取り組むべき研究テーマについては、これまで積み重ねてきた実績と培われた強みを生かしつつ、国民世論の動向等も踏まえ、設定していく必要があり、その際には、年金制度関連のテーマと年金運用関連のテーマのバランスにも配慮していく必要がある。

当面、当機構として、優先的に取り組んでいくべきテーマと取り組みの方策は、次のとおりである。

(1)
公的年金制度については、老後保障におけるその役割を評価した上で、長期的に持続可能な制度設計のあり方や世代間及び同一世代間の給付と負担の問題、制度の一元化や財源問題、社会保障制度の中での公的年金制度の位置づけ等多様な論点が提示されており、こうした論点について、実証的な分析を行い、実現可能な政策上の選択肢を整理し、その効果や影響を明らかにした上で、理論面での裏づけを行っていく。
また、企業年金制度については、国民の多様な引退後生活のニーズに応えていくためには、益々重要となっていることから、その一層の発展や育成のための方策について研究を行うとともに、各種の企業年金プランの設計等に関して、欧米の事例も参考としつつ、研究していく。
(2)
年金運用に関しては、主体の属性や資金規模等の条件を考慮した上で、運用業務のより一層の高度化や改善に寄与すべく諸課題に取り組む。具体的には、投資管理の各プロセスにおいて、合理的、効率的かつ操作可能性の高い手法を追求していく。そうした観点から、委託者の問題意識等も踏まえつつ、様々なテーマを設定し、欧米の主要年金基金の動向等も参考にしながら、研究を進めていく。また、研究成果について実務面への応用のためのフォローアップを行うとともに、今後は、研究テーマについての企画提案機能も高めていく。
また、年金資金の運用組織のあり方や携わる人材に要求される専門性を明らかにしていくことや、投資ニーズに合致する資産や市場の分析評価を行っていくことも研究対象である。
(3)
また、年金運用の分野の研究においては、株主価値向上のための効果的なコーポレート・ガバナンス活動のあり方や企業会計制度の問題等も研究テーマであり、そうした研究を通じて、投資家にとってより透明で効率的な市場の整備を促進していく必要がある。
(4)
年金制度と経済社会システムとの関係については、年金制度が貯蓄、雇用、成長等に与える影響について、多面的な角度からミクロ、マクロの実証的な分析を行い、年金制度の影響や効果を明らかにしていく。また、人口減少・超高齢化社会の到来、高度成長を支えた諸条件の消失、家族の態様や機能の変容や働き方の多様化等わが国経済社会の構造変化が現行制度に与える影響についても分析も行っていく。

4.今後の事業展開の重点事項

以上を踏まえ、当機構としての事業展開に当たっては、今後次のような事項に重点を置くべきである。なお、これに当たっては、業務の見直しによる効率化を図りつつ、全体として効果的に推進するよう留意すべきである。

(1) 自主研究の充実と受託研究の着実な遂行
当機構としての潜在能力を発揮し、対外的な発言力を高めていくためには、今後、機構の問題意識に基づく自主研究に力点を置く必要がある。自主研究を充実させていくためには、活動基盤を強化し、研究財源を確保する必要があるので、現在の厚生労働科学研究費以外の新たな助成先の開拓等にも努める必要がある。
また、受託研究については、委託者のニーズや問題意識を踏まえ、顧客満足度の高い研究成果をあげていくことが目標となる。また、研究成果については、委託者が十分実務に活用できるよう必要なフォローアップも行っていく。また、今後、当機構の公益法人としての性格を踏まえ候補となりうる委託先のニーズ調査等を行うことにより、新たな委託先の開拓についても努め、その多様化を図っていく。
(2) 効果的な研究推進体制の構築
研究推進体制については、機構の常勤研究員を中心としつつも、テーマに応じて、外部の有識者等参加を得て、レベルの高い体制を整備する。また、現在の研究員の体制は、受託研究のテーマに応じたタスクフォース的体制となっているが、今後、当機構がその役割を果たし、この分野での存在感を高めていくためには、研究戦略を実行するための体制としていく必要がある。研究員の自主性や専門性を踏まえて、各研究員ごとの専門分野を確立し、主要研究領域を担当する体制として、一層の専門性や研究効率の向上を図る必要がある。なお、そうした専門分化とともに、IT技術の積極的な活用による業務処理の一層の効率化、研究員全体のレベルアップや活性化のための研究員相互の情報、知識の共有化にも配慮していく必要がある。
また、この分野の研究者の裾野を広げていくため、これまでの常勤・客員研究員のネットワークを活用するとともに、有望な若手の研究員に対して、研究参加や研究成果の発表等の機会の提供を行っていくことも必要である。
(3) 当機構独自のデータ等の整理蓄積やモデルの構築
これまで当機構では様々な調査研究活動を行う過程で独自に実施した統計調査や開発した分析手法等も多いが、これらは各研究テーマの報告書に反映されるのみで、他の研究で活用する体制が十分取れていない。これらの独自データ等は当機構の重要な知的資産として組織的に整理蓄積を図っていく必要がある。
また、年金制度とマクロ経済との関係を分析し、様々な政策上の選択肢を評価するためには、そのツールとして、実証分析に基づき、年金制度を明示的に挿入した、操作可能性の高い計量モデルが有効である。今後、当機構の研究ポテンシャルを高めていくためにも、そうした当機構の独自モデルの開発に努める。
(4) 各種の研究機関との連携、研究者の支援
この分野の研究基盤を強化していくための一環として、大学の研究所やその他の研究機関との情報交換を積極的に行うとともに、共同研究の実施やセミナーの共同開催等他の研究機関との共同事業も検討していく。
また、年金の研究者を支援し、年金に関する建設的な議論を喚起・奨励していく見地から、引き続き日本年金学会を支援するとともに、研究論文の公募事業等についても検討する。
(5) 各種調査研究のサーベイとデータベースの整備等研究促進のための基盤整備
様々な立場の研究者や調査研究機関などが行う年金に関する調査研究活動の動向を常時把握するサーベイ体制を整備する。また、研究者の研究活動やこの分野の研究環境の整備を進めていくため、外部の研究者や研究機関が幅広く容易に利用可能なデータベースの整備に努めていく。例えば、論文検索システムや研究に使用した統計データ等のデータベースの整備を行っていく必要がある。また、海外の年金政策や欧米の主要年金基金の動向等の情報についても整理し、利用可能なデータベースとする必要がある。さらに、この分野の各研究者間の自由な意見や情報の交換を促進していくため、公開可能な研究者のデータベースの充実を図っていくことも必要である。
(6) 質の高い普及啓発事業等の実施
当機構の存在感を高めていく上では、当機構のこれまでの研究実績等を活用して、年金に関心を寄せる様々な立場の方々の問題意識やニーズにマッチした質の高い、セミナー、フォーラムの実施が有効であることから、テーマの設定等に配慮しつつ、積極的に実施する。
また、機関誌を当機構の調査研究の発信手段としてより一層活用するとともに、編集の過程を調査研究活動の一環として位置づけ、情報を収集整理し、議論を深める機会としても活用していく。
更に、インターネットによる報告書や機関誌の内容情報の提供などの効果的な情報発信インフラの整備を進める。
(7) 機構の資源を活かした研修、教育支援
企業年金基金等の関係者を対象に、それぞれのニーズに応じて、年金資金運用等に関する研修や投資管理実務等についての教育支援活動を行っていく。また、確定拠出年金に関わる投資教育についても、関係機関と連携しつつ、必要に応じて、対応する。更に、年金教育の適切な展開など新規の事業についても可能性を探り、有効であると判断されれば、しかるべく展開を図る。
(8) 活動基盤の充実
当機構が今後こうした事業展開を行っていくためには、その活動の財政的基盤を強化していかねばならない。そのためには、賛助会員の拡大、助成先の開拓をはじめ関心の高いセミナー、フォーラムの開催、企業年金基金等を対象とした資金運用に関する支援サービスの実施や研修事業の拡大等に積極的に取り組んでいく必要がある。特に、賛助会員の拡大については、当機構のこれまでの活動実績により、関係者も相当数に上ることから、法人単位の会員だけでなく、個人単位の会員の獲得にも力を入れていく必要がある。

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