第4章 確定拠出年金制度(DC)早わかり
第1節 企業型DCと個人型DCとは?
剛(編集者):何だか話を聞いてきたら確定給付年金(DB)と違って確定拠出年金(DC)は自己責任で運用を考えるようだから、もう少しまじめに確定拠出年金(DC)について教えてもらおうかな。
勉(研究員):下の表を見てもらおうか。
DCのメリット・デメリット(下線は筆者)
メリット | デメリット |
・加入者個人が運用の方法を決めることができる。 |
・投資リスクを各加入者が負うことになる。 |
厚労省HP 確定拠出年金制度の概要より
勉(研究員):ポイントは運用の結果は自己責任という点だ。メリットの下線にあるように「運用が好調なら年金額が増える」けれど、逆に言えばデメリットにある通り「運用が不調なら年金額が減る」こともある、というわけだからね。つまり個々人が自己責任で投資するという意味合いをよく考えておかないといけないぞ。
花子(ライター):事業主にとっては「掛金の追加負担が生じない」というのが最大のメリットでしょう?
剛(編集者):デメリットに「運用するために一定の知識が必要」とあるけれど、会社から運用リスクを押し付けられて、投資運用の知識がないと元本割れするリスクを背負い込まされるなんて随分とこわい制度だね。
勉(研究員):だからこの前にも説明したように運用リスクを労使でシェアする「第3の企業年金制度」というリスク分担型確定給付年金が出来たわけだね。
花子(ライター):ところで確定拠出年金(DC)には企業型DCと個人型DCの二種類があるんでしょう?私には企業型DCは関係ないけれど個人型DC、つまりiDeCoには大いに関心があるんだけど解説してくれない?
勉(研究員):そもそも確定拠出年金(DC)というのは拠出された掛金が個人ごとに明確に区分され、掛金とその運用収益との合計額をもとに年金給付額が決定される年金制度であり、企業型DCと個人型DCの二種類があるんだ。
従来、企業型DCの対象者は企業に勤めている60歳未満の会社員(規約に定めていれば65歳まで加入可)、個人型DCの対象者は自営業者か、勤務先の企業に企業年金制度がない一部の会社員に限られていたけれど、2017年の確定拠出年金法改正によって大幅な変更があって原則、誰でも加入できるように間口が広がったんだ。
でも拠出限度額がパズルのように難解でそれを分かり易くグラフにしてみたよ。このグラフの中で花子は自営業者だから月額6.8万円というのは今回の法改正では変わらなかったけれど、剛の会社がもしDBを残したまま企業型DCを導入し企業年金規約において個人型年金への加入が認められた場合は上限1.2万円の拠出が可能になるというわけだ。
剛(編集者):そうか、もし個人型DCに入るとしても月額1.2万円しか払い込めないなら間違った運用をしてもそれほど痛手はないということかな。
勉(研究員):厚労省のホームページを貼り付けておくから運用する上での留意点や税制メリットについてはおいおい説明しよう。剛の会社が実際に企業型DCを導入した場合に個人型DCを上乗せする以外のやり方もあるのでそれは今度説明しよう。
(1)対象者(制度に加入できる者)及び拠出限度額
企業型DC |
個人型DC (iDeCo) |
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実施主体 |
企業型年金規約の承認を受けた企業 |
国民年金基金連合会 |
加入できる者 |
実施企業に勤務する従業員 |
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掛金の拠出 |
事業主が拠出(規約に定めた場合は加入者も拠出可能) |
加入者個人が拠出(「iDeCo+」(イデコプラス・中小事業主掛金納付制度)を利用する場合は事業主も拠出可能) |
拠出限度額 |
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(注)厚生年金基金等・・・厚生年金基金、確定給付企業年金、石炭鉱業年金基金、私立学校教職員共済
- 第1号厚生年金被保険者・・・第2号厚生年金被保険者、第3号厚生年金被保険者及び第4号厚生年金被保険者以外の厚生年金保険の被 保険者をいう。
- 第2号厚生年金被保険者・・・国家公務員共済組合の組合員である厚生年金保険の被保険者をいう。
- 第3号厚生年金被保険者・・・地方公務員共済組合の組合員である厚生年金保険の被保険者をいう。
- 第4号厚生年金被保険者・・・私立学校教職員共済法の規定による私立学校教職員共済制度の加入者である厚生年金保険の被保険者をい う。
(2)運用
1.運用商品の中から、加入者等自身が運用指図を行います。
2.運用商品は、預貯金、投資信託、保険商品等となっています。
3.運用商品を選定・提示する者は、必ず3以上(簡易企業型年金においては2以上)35以下(※)の商品を選択肢として提示することとなっています。
※ 平成30年5月1日時点において提示している商品数が35を上回っている場合、5年間は平成30年5月1日時点の商品数が上限。
(3)離転職の場合等の年金資産の移換
1.資産残高(掛金と運用収益の合計額)は個々の加入者等ごとに記録管理されており、資産額等の記録が年1回以上通知されることになっています。
2.加入者等が転職した場合等には、退職して国民年金の加入者となった場合等には個人型年金へ、転職した場合は転職先の企業型年金等へ資産を移換することができます。
(4)給付
老齢給付金 | 障害給付金 | 死亡一時金 | 脱退一時金 | |
給付 |
5年以上の有期又は終身年金(規約の規定により一時金の選択可能) |
5年以上の有期又は終身年金(規約の規定により一時金の選択可能) |
一時金 |
一時金 |
受給要件等 |
原則60歳到達した場合に受給することができる(60歳時点で確定拠出年金への加入者期間が10年に満たない場合は、支給開始年齢を引き伸ばし) |
70歳に到達する前に傷病によって一定以上の障害状態になった加入者等が傷病になっている一定期間(1年6ヶ月)を経過した場合に受給することができる |
加入者等が死亡したときにその遺族が資産残高を受給することができる |
一定の要件(注)を満たした場合に受給することができる |
(注)脱退一時金の支給には、以下2つのケースがあります。
1.企業型年金を資格喪失した後に企業型記録関連運営管理機関に請求するケース。
・以下の全ての要件に該当する者
[1] 企業型年金加入者、企業型年金運用指図者、個人型年金加入者及び個人型年金運用指図者でないこと。
[2] 資産額が15,000円以下であること。
[3] 最後に当該企業型年金加入者の資格を喪失してから6ヶ月を経過していないこと。
2.個人型記録関連運営管理機関又は国民年金基金連合会に請求するケース。
・以下の全ての要件に該当する者
[1] 国民年金保険料免除者であること。
[2] 障害給付金の受給権者でないこと。
[3] 掛金の通算拠出期間が3年以下であること(退職金等から確定拠出年金へ資産の移換があった場合には、その期間も含む)又は資産額が25万円以下であること。
[4] 最後に企業型年金加入者又は個人型年金加入者の資格を喪失した日から起算して2年を経過していないこと。
[5] 上記1.による脱退一時金の支給を受けていないこと。
(5)税制
企業型年金 |
個人型年金(iDeCo) |
|
拠出時 |
非課税(事業主が拠出した掛金額は、全額損金算入・加入者が拠出した掛金額は、全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)) |
非課税(加入者が拠出した掛金額は、全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除) ・ 「iDeCo+」を利用し事業主が拠出した掛金額は、全額損金算入) |
運用時 |
特別法人税課税(現在、課税は停止されています) |
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給付時 |
|
厚労省HPより転載