連載:わかりやすい年金のお話

第4章 確定拠出年金制度(DC)早わかり
第2節 「マッチング拠出」と「iDeCo」と「つみたてNISA」?

花子(ライター):この前は確定拠出年金(DC)には企業型DCと個人型DC(iDeCo)の2種類があることを学んだわね。
 先日、知り合いから相談を受けたんだけれど、彼女の会社の企業型DCで「マッチング拠出」を始めるという回覧が回ったけれどそれが何を意味するか良く分かっていないので困る、という話を聞いたわ。その「マッチング拠出」って何?

勉(研究員):マッチング拠出制度とは、企業型DCで企業が支払う掛金に、従業員が上乗せして掛金を支払う制度だよ。2012年から法改正で可能になったんだ。限度額・上限があるものの所得控除も使えるため節税効果があり、将来の資産形成の運用を効率的に行うことができると、導入企業が増えていて、今では「マッチング拠出」導入企業は3割を超えているね。

剛(編集者):背景にあるのは長寿化で、老後資金を貯めていくことに不安が高まっているということだな。

勉(研究員):そうだよ、マッチング拠出は規約に定めれば導入可能だ。ただマッチング拠出制度を入れた企業でも、加入は任意だから、従業員の利用率はまだ3割程度なんだ。また利用拡大の障害になっているのが掛金の上限と言われているよ。企業型DCの掛金上限は5.5万円で、従業員が上乗せできるのは会社の掛金と同額までだ。だから会社が2.75万円拠出していたら、従業員の上乗せも同額なんだ。しかし必ずしも上限額一杯まで会社が掛金を支払うわけでもないよね。そうすると従業員の上乗せもその会社の掛金までと限られるんだ。

剛(編集者):自分で掛金を支払うので、掛金は全額所得控除の対象だね?

勉(研究員):そうだ。年末調整や確定申告の際に「小規模企業共済等掛金控除」の対象になるから、全額控除できるので所得税・住民税が少なくなるよ。

花子(ライター):2017年1月から個人型DC(iDeCo)の拡充で、企業型DCの上乗せについてマッチング拠出だけでなく個人型DCでも上乗せできるようになったと聞いたけれど、マッチング拠出とiDeCoとどこが違うの?

勉(研究員):まず押さえておきたいポイントはマッチング拠出と個人型DCの併用は不可という点だ。先ほども言ったようにマッチング拠出は事業主が規約変更で導入するから、勤務先で導入されればマッチング拠出に加入できるし、導入されなければ加入できないんだ。また会社がマッチング拠出にしたら自分はiDeCoにするということもできないよ。
 マッチング拠出の場合に選択できる運用商品は運営管理機関の商品で、運営管理手数料は一般的に企業負担となることが多いので事務的な手間はかからない。
 一方、iDeCoなら運営管理機関を個人で選ぶので運用商品は自分の投資スタンスに合う商品を選択できる代わりに運営管理手数料は個人で支払うことになるし事務は全部、自分でやらないといけないね。
 いずれにしてもマッチング拠出かiDeCoが出来るのならば利用しない手はないよ。節税効果がある商品は、この低金利の運用環境では確実にリターンにプラスに影響するからさ。

剛(編集者):2018年1月から「つみたてNISA」が始まったよね。確定拠出年金とは違う制度だけれども、運用して利益が出た分は非課税であることは同じだろう?つみたてNISAとマッチング拠出との主な違いは?

勉(研究員):つみたてNISAの場合は、マッチング拠出かiDeCoを選択していたとしてもつみたてNISAを始められるよ。つみたてNISAの特徴を挙げてみよう。

  • 掛金の上限 年間40万円(月々約3.3万円)
  • 運用商品  預金や保険はない。ほとんどが投資信託(インデックスタイプがほとんど)で金融庁の課した要件を満たしたもの
  • 手数料   つみたてNISAは口座の開設・維持に手数料はかからない。運用手数料は要件を満たした割安なものだけ
  • 金融機関  自分で選べる
  • 運用期間  20年間
  • 解約    中途解約可能
  • 税制優遇  運用益は非課税。ただし所得控除や退職所得控除はない

つまり「つみたてNISA」は掛金支払いの余裕がある花子にはお薦めだよ。税制メリットがあるし、また確定拠出年金のように60歳ではなく20年なのである程度年齢を重ねている人でも長く積立投資が可能だからね。
 他にも中途解約ができるので換金性があるところもポイントだな。

花子(ライター):老後資金を積み立てる方法もこんなに沢山あると覚えきれないわね…

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