4 給付全般について

1 年金はどんな場合にもらえるの?

65歳になれば老齢年金を、一定の障害状態になれば障害年金を、一家の大黒柱が亡くなれば遺族年金を受給できることが基本ですが、保険料納付が前提です。未納だと、いざという場合に受給できないことがあります。

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 公的年金の給付には、老齢年金、障害年金、遺族年金の3種類があります。それぞれ細かな支給要件等があります。
 年金制度は保険としての性格を有しています。従って、保険料を支払った人が保険の受益者になることが基本です。公的年金でもこの原則は変わりません。給付を受けるには保険料納付が前提になります。未納だと、いざという場合に受給できないことがあります。
 必要に応じ老齢給付について障害給付について遺族給付について保険料の未納が続くとどうなるの?をご覧ください。

2 年金を受け取るにはどうすればいい?

年金は法律で定める受給要件を満たしただけで受給できるわけではありません。受給要件に該当することについて、裁定を受ける必要があります。裁定手続きのし方は最寄りの年金事務所でお問い合わせください。

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 年金を受給するには請求が必要です。法律で定める受給要件を満たしても、請求がなければ支払われません。
 また、請求が行われた場合、請求者が受給要件を満たしているかどうか確認が行われ、そのことが確認されて初めて支給が始まります。この確認を「裁定」と呼びます。
 法律上は受給要件を満たせば受給権が生じます。裁定はその確認行為ですので、裁定が行われると、法律に従い、受給権が発生した翌月分からの年金が支払われます。
 厚生年金に加入したことがある方には、特別支給の老齢厚生年金の受給可能年齢(令和5年度では女性62歳、男性64歳)に達する約3カ月前、それ以外の方には65歳に達する約3カ月前に、請求関係の書類が日本年金機構から送付されるのが通常です。届かない方は適宜最寄りの年金事務所にお問い合わせください。
 請求書類に必要事項を記入し、戸籍や住民票などを添付しますが、添付資料は受給可能年齢到達より後に発行されたものである必要があります。従って、請求は年齢到達後に行います。早ければ早いほど良いということではありませんので、注意が必要です。
 年齢到達後に請求し、裁定にも1~2カ月かかることが通常です。従って最初は少し遅れる場合がありますが、年金としては年齢到達時の翌月分からのものが支払われます。その後は、偶数月に2月分ずつ定期的に支払われます。
 請求書類には記入事項も多く、また、大半の方にとっては初めての経験だと思われます。最寄りの年金事務所又は年金相談センターでよくご相談されることをお勧めします。

3 ねんきん定期便が来たけどこれは何?

年金加入記録の確認などのため、毎年誕生月に日本年金機構から送られてくる文書です。35・45・59歳の方には封書、その他の方にはハガキでこれまでの加入期間や将来の年金見込額などが通知されます。

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 ねんきん定期便は、年金加入記録の確認などのため、国民年金及び厚生年金の被保険者に毎年日本年金機構から送られてくる文書です。ねんきん定期便は、誕生月の2か月前に作成され、誕生月に届くようになっています。ただし、1日生まれの方は、誕生月の3か月前に作成され、誕生月の前月に届きます 。
 「節目年齢」と呼ばれる35・45・59歳の方には封書で、加入当初からの年金記録が記入された文書が送付されます。年金加入記録回答表や返信用封筒が同封されていますので、もれや誤りがある場合は記入してご返送ください(もれや誤りがない場合は返送不要です)。
 それ以外の年齢の方には、最近の保険料納付実績などが記入されたハガキが送付されます。もれや誤りがあると思われる場合は最寄りの年金事務所にご連絡ください。
 また、保険料納付実績に基づき、年金見込み額も記入されています。50歳未満の方は、それまでの納付実績に基づいた額が記入されるのに対し、50歳以上の方には、現に加入している制度にそのまま60歳まで加入し続けたと仮定した場合の額が記入されます。  ねんきん定期便についての詳細は日本年金機構のホームページにあるねんきん定期便関係のページから必要な情報をご参照ください。

4 パソコンやスマホで年金の加入記録を確認できないの?

ねんきんネットに登録するとご自分で年金加入記録を確認できるほか、将来受け取る公的年金の金額をシミュレーションすることもできます。詳しくは日本年金機構のホームページをご覧ください。

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 ねんきんネットは、インターネットを通じて自身の年金に関する様々な情報を手軽に確認できるサービスです。これによって、24時間いつでも、最新の年金記録を確認できます。また、自分で簡単に年金見込額を試算できます。パソコンやスマートフォンで利用可能です。
 ねんきんネットを利用するには、マイナポータルから登録する方法と、ユーザIDを取得して利用登録する方法の2つがあります。
 マイナポータルから「ねんきんネット」を利用するためには、マイナンバーカードとメールアドレスが必要です。パソコンもしくはスマートフォンからマイナポータルにログインして、「年金記録・見込額を見る(ねんきんネット)」から「ねんきんネット」への連携手続きを行ってください。
 ユーザIDを取得した利用については、アクセスキーを持っている場合は、ユーザIDがインターネット上で即時に発行されます。アクセスキーとは、ユーザIDを即時に発行するための17桁の番号です。毎年誕生月に、日本年金機構から年金加入者の方に送付される「ねんきん定期便」に記載されています。
 アクセスキーを持っていない場合は、ハガキでIDを通知してもらいます。これには5日ほどかかります。
 ユーザIDを取得して利用登録するには、基礎年金番号が必要です。年金手帳または年金証書を準備してください。また、メールアドレスもご準備ください。利用登録によって所得したユーザID、パスワード、秘密の質問と答えは大切に保管してください。ユーザID、パスワードを忘れた場合は、再度利用登録が必要です。
 ねんきんネットについての詳細は日本年金機構のホームページにあるねんきんネットのページをご参照ください。

5 年金の請求手続きをしたら、いつから、どのように年金をもらえる?

請求内容が正しければ、受給年齢到達など受給事由が生じた月の翌月分から支払いが始まります。以後は、偶数月に前月と前々月の2月分が支払われます。なお、裁定手続きに通常1~2か月かかります。

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 年金を受給するには請求が必要です。法律で定める受給要件を満たしても、請求がなければ支払われません。
 また、請求が行われた場合、請求者が受給要件を満たしているかどうか確認が行われ、そのことが確認されて初めて支給が始まります。この確認を「裁定」と呼びます。
 法律上は受給要件を満たせば受給権が生じます。裁定はその確認行為ですので、裁定が行われると、法律に従い、受給権が発生した翌月分からの年金が支払われます。
 なお、老齢年金は65歳到達が受給要件の1つです。65歳に達するのは、法律上は誕生日の前日の終了時(午後12時)とされています。各月の1日が誕生日の人が65歳に達するのはその前日である前月末日の終了時です。このため、1日生まれの人だけは、誕生日の属する月の前月末日に受給権が生じることから、各月1日生まれの人は誕生月分から、それ以外の人は誕生月の翌月分からとなります。
 裁定は、受給事由が発生した事実を確認することにより行われますので、必ず発生後になり、事務処理のために通常1~2か月の時間がかかります。このため、最初の年金の支払いは、受給権が発生した翌月分までさかのぼってまとめて支払われる場合があります。以後は、偶数月に前月と前々月の2月分が支払われます。
 年金の支払いは銀行振込みの形で行われるのが通常です。

6 年金を請求し忘れていたけど、いつまでさかのぼってもらえる?

原則は最長5年です。年金の受給権は、各支払期月の翌月の初日から5年を経過すると、時効によって消滅します。なお、5年以内に請求できなかったやむを得ない事情がある場合には、年金事務所でご相談ください。

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 年金の給付を受ける権利は、受給要件を満たしたことによって発生する年金の受給権(これを基本権といいます)と、それに基づき支払期月ごとに又は一時金として支給を受ける権利(これを支分権といいます)からなります。基本権については支給事由が生じた日から5年、定期的に受給する支分権については各支払期月の翌月の初日から5年を経過すると、時効によって消滅します。受給要件に該当しながら請求をせずに5年以上が経過しますと、たとえ受給要件に該当する状態は存続していても、5年より前の支分権は時効によって消滅します。従って、さかのぼって受け取れるのは5年前までの分です。ただし、国民年金法に基づく死亡一時金を受ける権利は、行使することができるときから2年を経過したときは、時効によって消滅します。必要に応じ 死亡一時金とは何?をご覧ください。  なお、令和2年の法律改正で繰下げ受給の上限年齢が70歳から75歳に引き上げられたことに伴い、本来受給選択時の特例的な繰下げみなし増額が導入されています。例えば72歳になってから、繰下げではなく、65歳から受給できたはずの本来受給を選択した場合、かつては、67歳から5年分の年金を一度に受け取ることができるものの、66歳までの2年分は時効によって消滅し受け取れませんでした。特例的な繰下げみなし増額が導入された令和5年度以降は、本来受給を選択しても、請求の5年前に繰下げの申出をしていたものとみなし、増額された5年分の年金を一度に受け取れるようになります。  また、国は時効の利益を放棄することができないとする会計法の規定は、年金の給付については適用しないこととされています。5年以内に請求できなかったやむを得ない事情がある場合には、その事情が考慮される可能性も考えられますので、年金事務所にお問い合わせのうえ、ご相談されることをお勧めします。

7 年金を担保にして消費者金融で借金できるかしら?

できません。給付を受ける権利は、担保に供することはできません。年金の受給権保護の観点から、法律でそのように定められています。

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 給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができません。ただし、老齢年金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含みます)により差し押える場合は、この限りではありません。
 これは、受給権の保護の一環として法律に規定されているものです。年金は社会保障の一環として国民の生活の基盤となるべきものです。譲渡や担保提供、差押えによって生活の基盤としての役割が実現できなければ、意味がありません。ただし、脱税まで保護するものではありません。
 この規定は強行規定と解されており、これに違反する法律行為は無効になります。従って、年金を担保に消費者金融で借金をしようとしても、そのような契約は無効になります。
 なお、かつては、独立行政法人福祉医療機構法に基づき同機構が行う、年金たる給付の受給権を担保とした小口の資金の貸付けが認められていましたが、令和4年4月以降は廃止されています。これは、社会福祉協議会が行う生活福祉資金貸付制度など年金を担保としない代替的手段が整備されていることなどを背景とするものです。

8 年金にも税金がかかるの?

心身の障害の発生や一家の大黒柱の死亡といった不幸に対する障害年金や遺族年金は非課税となっています。老齢(退職)年金は雑所得として課税対象になりますが、公的年金等控除の対象となる優遇措置があります。

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 法律上、租税その他の公課は、給付として支給を受けた金銭を標準として、課することはできないとされています。ただし、老齢年金(老齢基礎年金、付加年金、老齢厚生年金)についてはこの限りではありません。
 このことから、障害年金と遺族年金については非課税となります。心身の障害の発生や一家の大黒柱の死亡といった不幸に対しては、租税の取り扱い上もその事情を考慮しているものといえるでしょう。
 これに対し、老齢年金は課税対象になります。所得税の課税に当たっては雑所得に該当します。ただし、公的年金等控除の対象となり、年間110万円(年金以外の所得が1,000万円以下の場合)までの老齢年金は非課税となるなど、給与所得などと比べ優遇されています。なお、公的年金等控除は、公的年金だけでなく、企業年金(ただし、退職時に一時金で受け取ると退職所得になり、別扱い)や国民年金基金から老後に受け取る年金にも適用されます。

9 年金は相続できないの?

年金の受給権は一身専属権ですので、相続の対象にはなりません。ただし、受給権者が死亡した場合でまだ支給されなかったものがあるときは、一定の範囲の遺族に未支給の年金又は保険給付として支給されます。

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 年金受給者は偶数月に2月分定期的に現金を受給します。その方法は通常銀行振込みによります。振り込まれた段階で、その支払期月に係る年金の受給はすでに完結しています。受給者が死亡したときに、預金口座に生前年金として支払われた現金が残されていた場合、それは、他の残された財産と同じく、相続の対象になります。
 質問は、年金の受給権そのものを相続できるかどうか、ということであると考えられます。回答もこれに対するものになっています。以下は、これについての解説です。
 年金の受給権は、受給権を有する者が死亡したときは、消滅します。これは死亡による失権といい、年金の受給権が一身専属の権利であることを表しています。一身専属の権利は、民法の規定により、相続の対象にはなりません。
 ただし、受給権を有する者が死亡した場合でまだ支給されなかったものがあるときは、死亡した者と生計を同じくしていた一定の範囲の遺族は、自己の名で、未支給の年金(国民年金の場合)又は未支給の保険給付(厚生年金の場合)の支給を請求することができます。例えば、保険料納付済み期間が10年以上ある人が65歳到達後も年金を請求せずに死亡した場合、未支給の老齢基礎年金が発生します。遺族の範囲は、死亡した者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹及びこれらの者以外の三親等以内の親族で、受けるべき順位もこれによります。
 この未支給の年金又は保険給付の支給は、相続とは異なります。未支給の年金等には、死亡した者と生計を同じくしていたという要件がありますが、相続にはそのような要件はありません。また、遺族が配偶者と子の場合、相続は配偶者と子が同時にできますが、未支給の年金等は先順位である配偶者に全額が支給されます。

10 基礎年金とはどういう年金?

保険料納付期間に比例する定額年金です。老齢基礎年金は保険料を40年(480月)納付して月6.6万円となります。遺族基礎年金や障害基礎年金は納付済み期間にかかわらずこの額が基礎になります。

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 基礎年金は国民年金法に基づく全国民共通の年金です。公的年金の1階部分に当たる公的年金の最も基本的な年金です。
 国民年金の第1号被保険者は、月々定額の国民年金保険料を納付します。第2号被保険者については、給与等から納付する厚生年金保険料に、自身や生計を維持する配偶者である第3号被保険者の分の国民年金保険料相当も含まれます。
年金額は、保険料納付期間に比例する定額の年金です。具体的には次のように算定します。
  年金額=780,900円×改定率×保険料納付月数÷480
 ここに改定率とは、平成16年度を1とし、毎年度、物価や賃金の変動に伴って改定される率のことです。令和5年度の改定率は、67歳以下の新規裁定者は1.018、68歳以上の既裁定者は1.015です。従って、同年度における40年間保険料を完納した満額の年金額は、新規裁定者は795,000円(月額66,250円)、既裁定者は792,600円(月額66,050円)になります。
 なお、保険料の免除期間があるときは、その期間は免除割合に応じて、1/2(全額免除)~7/8(1/4免除)を乗じて、年金額を算出します。ただし、平成21年3月までの期間については、1/3(全額免除)~5/6(1/4免除)を乗じます。
 年金は保険としての性格を有することから、死亡や障害といったリスクに遭遇した場合に支給される遺族年金や障害年金は、保険料納付済み期間にかかわらず、満額の基礎年金額を基礎に年金額が算定されます。例えば、障害基礎年金1級は満額の基礎年金の1.25倍、2級は満額の基礎年金額相当になります。

11 厚生年金はどういう年金?

現役時代の給与に比例する報酬比例年金です。保険料額の算定に給与や諸手当、賞与などから計算される標準報酬額を用います。年金額は生涯の標準報酬額の累計額に一定率を乗じて得た額となります。

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 厚生年金は厚生年金保険法に基づく被用者、すなわち、会社や官庁に雇われて働く人たちのための年金です。基礎年金と併せて受給することが通常であることから、公的年金の2階部分に該当します。
 被用者は、労働の対償として給与や諸手当、賞与などを受け取ります。これをもとにした標準報酬額に一定の保険料率を乗じて算定される厚生年金保険料を納付します。
厚生年金は、現役時代の給与等に比例する報酬比例年金です。基本的には次のように算定します。
  年金額=平均標準報酬額×0.005481×被保険者期間の月数
 ここに平均標準報酬額とは加入期間中の標準報酬額の累計額を被保険者期間の月数で除したものです。年金額の算式には、被保険者期間の月数を乗じる部分もありますので、結局、標準報酬額の累計額に5.481/1000を乗じたものになります。
 この5.481/1000は給付乗率と呼ばれます。従来の制度改正によって改正が重ねられており、生年月日によってこれよりも高いものを用いる様々な経過措置が定められています。標準報酬額は過去における物価や賃金の変動をもとに調整されます。
 必要に応じ標準報酬額とは何?老齢厚生年金の額はどのように決まるの?をご覧ください。

12 標準報酬額とは何?

厚生年金の保険料や年金額の算定の基礎になる額です。月々の給与等を9.3万円未満から63.5万円以上までの32の等級に区分した標準報酬月額と、1回上限150万円の標準賞与があります。

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 厚生年金の被保険者は会社や官庁で雇われて働く被用者であり、労働の対償として給与や諸手当、賞与などを受け取ります。ほぼ毎月定期的に受け取る報酬に基づく標準報酬月額と、3月を超える期間ごとに受け取る賞与に基づく標準賞与が算定されます。
 各事業所において、毎年7月1日現在の被保険者ごとに、4月から6月までの3か月間の間に受け取った給与などの報酬(臨時に受け取るもの及び3月を超える期間ごとに受け取るものを除きます)を3で除し、月額を求めます。ここに、報酬とは、名称の如何を問わず労働の対償として受け取るすべてのものをいい、給与の他に通勤手当や住宅手当なども含みます。
 その月額を、9.3万円未満から63.5万円以上までの間の32の等級区分にあてはめ、該当する標準報酬月額が決まります。これを定時決定といい、その年の9月から翌年8月までの標準報酬月額となります。ただし、途中で報酬月額に著しい高低が生じた場合は、随時改定が可能です。
 一方、賞与、ボーナス、特別手当などの名称で3月を超える期間ごとに受け取る賞与については、受け取った額の千円未満を切り捨て、また、その額が150万円を超えるときは150万円として、受け取った月の標準賞与が決定されます。
 毎月の標準報酬月額と賞与を受け取る都度の標準賞与に、一定の保険料率を乗じて、厚生年金保険料が算定されます。また、生涯の標準報酬月額と標準賞与の累計額に給付乗率を乗じて、年金額が算定されます。
 必要に応じ通勤手当にも社会保険料はかかるの?をご覧ください。

13 物価や賃金水準が変化したら年金はどうなる?

物価や賃金が上がっても年金額が変わらなければ、年金の実質価値が低下します。そのため、毎年度、賃金上昇率又は物価上昇率に応じ年金額は改定されます。これを年金額の自動スライドといいます。

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 年金は、若い間に保険料を納めるという貢献を行い、老後に、その貢献の度合いに応じて給付を受け取る仕組みです。保険料は働いて納めるものであることから、65歳になって年金を受け取り始める新規裁定者には、若い間に働いた時の価値を受給開始の時点での価値に再評価するために、賃金上昇率によって改定率(基礎年金)又は標準報酬額の再評価率(厚生年金)の改定が行われます。この場合の賃金上昇率は、厚生年金保険料率の上昇を考慮した前々年度までの過去3年度間平均の名目手取り賃金変動率が用いられます。
 受け取り始めて3年以後である68歳以上の既裁定者の年金については、年金は老後の基礎的な消費支出に充てることが想定されていることから、毎年度、物価変動率に応じて改定されることが基本です。物価変動率は前年の消費者物価指数の上昇率が用いられます。ただし、年金は現役の被保険者が納付する保険料をもとに給付が行われるため、支え手である現役の賃金の範囲内で年金額を改定することが適切との考え方から、物価上昇率より名目手取り賃金上昇率が低い場合は、同賃金上昇率に応じて改定されます。
 障害年金や遺族年金でも、同様に、受給者が67歳以下か68歳以上かによって改定率等が変わります。ただし、加給年金や振替加算、障害基礎年金及び遺族基礎年金における子の加算については新規裁定者の改定率が用いられます。
 なお、以上の取扱いは、賃金上昇率、物価上昇率がプラスの場合だけでなく、いずれか又は両方がマイナスの場合にも、適用されます。

14 マクロ経済スライドって何?

著しい少子高齢化が進む中でも年金の持続性を確保するため、年金の給付水準を調整する仕組みです。具体的には、物価や賃金の伸びから1%程度低い率でスライドさせ、長期的に所得代替率50%程度を確保します。

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 日本では世界に類を見ない少子高齢化が進行しています。そのような中でも将来にわたって年金の持続性を確保するため、平成16年の改正で、将来の保険料(率)の上限をあらかじめ法定し、その範囲内で給付を賄う方式になりました。
 マクロ経済スライドは、この一環として導入されたものです。保険料(率)の上限を固定した場合、年金の給付水準をある程度抑制する必要があります。そこで、通常のスライドで用いられる賃金変動率や物価変動率に、さらに一定率を乗じた率で、年金額のスライドを行います。
 この一定率は、支え手人口の減少及び平均余命の伸びの2つの要素が考慮されています。支え手人口については、公的年金被保険者数の前々年度までの過去3年度間の平均減少率が用いられます。平均余命の伸びとしては0.997(0.3%減)が法定されています。この2つの率を乗じることにより、通常のスライドより1%程度低い率のスライドとなると想定されます。
 マクロ経済スライドによって、平均的な所得代替率を現行の約60%から50%程度に低下させ、年金財政の持続性を確保することとされています。
 なお、賃金や物価が低下したときは、マクロ経済スライドは行われません。日本経済はデフレが続いたため、ようやく平成27年度に初めて発動されました。将来世代の年金額の過度の低下を防ぐために、調整はできるだけ早く行う必要があることから、令和元年度以降は、デフレ下で見送った分をその後物価や賃金が上昇した時まで持ち越し、キャリーオーバー分として、その時に調整するルールになっています。なお、令和5年度は賃金変動率2.8%、物価変動率2.5%と高くなったため、令和3年度、4年度のキャリーオーバー分を含めてマクロ経済スライド調整が行われています。
 必要に応じ物価や賃金水準が変化したら年金はどうなる?所得代替率って何?マクロ経済スライドはデフレでも発動されるようになる?をご覧ください。

15 所得代替率って何?

現役の報酬額に対して給付額がどの程度かを表す指標です。年金の給付水準に関しては、現役の平均的な手取り賃金に対する、片働きだった厚生年金受給世帯が夫婦で受け取る年金額の比率がよく用いられます。

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 年金は現役の被保険者が保険料を拠出し、高齢者が給付を受け取る仕組みです。このことに着目すると、年金の給付水準は、現役の報酬の水準との相対的な割合で評価することが適切であると考えられます。
 所得代替率は、このような考え方に基づく指標です。現役の報酬額に対する給付額の割合として計算されます。
 公的年金の給付額については、片働きだった厚生年金加入世帯が夫婦で受け取る平均的な年金額をモデル年金といい、よく言及されます。男子の平均的な賃金水準で40年間厚生年金被保険者であった者の受け取る老齢基礎年金及び老齢厚生年金と、その配偶者の受け取る老齢基礎年金を合計したものです。なお、配偶者が専業主婦(第3号被保険者)であっても第1号被保険者であっても、年金額は変わりません。モデル年金を専業主婦世帯の年金額と決めつけるのは、必ずしも正確ではありません。
 公的年金においては、将来にわたる年金財政の持続性確保のため、マクロ経済スライドによって給付水準を徐々に抑制する措置が講じられています。
 公的年金においては、モデル年金額の、男子厚生年金被保険者の平均的な標準報酬額(公租公課を控除した手取り額)に対する比率が50%以上となるような給付水準を将来にわたり確保することとされています。従って、所得代替率の下限は50%であり、仮に将来、5年以内に50%を下回ることが見込まれることとなる場合、政府は、給付と負担にあり方について検討の上、所要の措置を講ずることが規定されています。
 必要に応じマクロ経済スライドって何?をご覧ください。

16 年金の端数処理はどのようになっているの?

裁定などでは、1円未満が四捨五入されますが、基礎年金額などは100円未満が四捨五入されます。各支払期月には1円未満が切り捨てられて支払われますが、端数の合計(1円未満切捨て)が2月期に支払われます。

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 年金の額は字義通り年額で表されるのが原則です。年金受給権の裁定や年金額の改定、年金額の計算の過程では、1円未満が四捨五入されます。ただし、基礎年金、加給年金、子の加算額などは100円未満が四捨五入されることが定められています。この結果、厚生年金の額は1円単位ですが、基礎年金などは百円単位の額になります。
 年額で表される年金は、偶数月ごとに2か月分が支払われます。この場合、年額を6で割りますが、1円未満の端数が切り捨てられます。そして、切り捨てられた端数の合計が毎年2月の支払期に上乗せされて支払われます。ただし、この場合も、1円未満の端数は切捨てになります。
 なお、年金額は、本FAQsも含め、月額で表示されることがしばしばありますが、これは一般の方の生活実感に合うよう便宜的に年額を12で割って示すものです。この場合も1円未満が切り捨てられて表記されることが多いようです。