9 年金財政について

2 賦課方式と積立方式といわれるけど、どう違うの?

賦課方式は各年度の給付をその年度の保険料で賄う財政方式です。加入強制が行われる公的年金で用いられます。将来の給付に備えてお金を事前に積み立てる積立方式は私的年金や個人年金で用いられます。

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 年金の財政方式を大別すると、賦課方式と積立方式があります。両者は概念上の違いであり、実際上は2者択一ではありません。
 賦課方式は、各年度の給付をその年度の保険料などの収入で賄う方式です。純粋な賦課方式では、積立金は持ちません。毎年度確実に保険料が確保される必要があることから、加入強制が行われる公的年金で用いられる方式です。加入強制が不可能な民間の年金では不可能な方式でもあります。諸外国でも公的年金は賦課方式によるのが通常です。
 積立方式は、将来の給付に備えてお金を積み立てる財政方式です。給付の財源として積立金ができますので、加入強制ができない私的年金や個人年金はこの方式によるのが通常です。
 賦課方式では、賃金や物価が変動しても、給付がスライドするとともに、それらの変動に伴って保険料収入も増減し、安定的に運営することが可能と考えられます。しかし、負担する世代と受給する世代の人口バランスが変化すると、世代間で給付と負担の不均衡が起こりやすい方式でもあります。
 一方、積立方式では、将来の給付が積立金として確保されますので、人口バランスが変動してもあまり関係ありません。しかし、積立金がインフレや株価下落などで減価するリスクがあります。
 すなわち、賦課方式は、経済変動には強いが人口変動に弱い、逆に、積立方式は、人口変動には強いが経済変動に弱い、概念上はこのようにいうことができます。ただし、そもそも年金は、時々の経済的成果の一部を振り向けるものです。そのことからすると、財政方式によって年金の持続性が左右されるというものでは、基本的にはありません。

4 基礎年金の1/2は国庫負担なの?

昭和60年に基礎年金が制度化された際に国庫負担は基礎年金の1/3になりました。平成21年度から国庫負担割合は1/2に引き上げられ、平成24年の社会保障・税一体改革でこの割合が恒久化されました。

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 基礎年金は全国民共通の年金であり、公的年金の1階部分を構成する最も基本的な年金です。そこで、充実した基礎年金の給付水準を確保し、年金財政の安定を図るといった観点から、給付費の1/2は国庫負担とされています。
 この国庫負担割合は、かつて1/3でしたが、平成16年の年金制度改正で、平成21年度から1/2に引き上げられることが法律上規定されました。しかし、このための安定的な財源がなかったことから、当面はつなぎ国債(年金特例公債)などで賄われました。平成24年の社会保障・税一体改革において、消費税率が5%から8%に引き上げられるのに伴い、これを基礎年金に対する国庫負担引き上げに充当することにより、将来にわたって1/2の国庫負担を確保することが可能となりました。

5 財政検証って何?

向こう100年にわたる人口の見通しをもとに一定の経済前提を置き年金財政がどのようになるのかを示すのが財政検証です。少なくとも5年ごとに実施されることになっています。いわば年金財政の定期健康診断です。

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 年金財政を将来にわたって維持していくため、従来は、5年ごとに財政再計算を行い、最終的に必要と見込まれる水準に向かって保険料(率)を段階的に引き上げていく方式が採られていました。これを段階保険料方式といいます。
 日本では世界に類を見ない少子高齢化が進行しています。そのような中でも将来にわたって年金の持続性を確保するため、平成16年の改正で、将来の保険料(率)の上限をあらかじめ法定し、その範囲内で給付を賄う方式に改められました。
 新たな方式では、向こう100年にわたる人口の見通しと一定の経済前提を置き年金財政がどのようになるのか明らかにします。そして、保険料(率)の上限の範囲で年金の持続性が確保できるかどうか、チェックします。
 かつての財政再計算は、5年ごとの保険料(率)引上げのために行われていました。これに対し、それを前提とせず、単にチェックするために行うのが、財政検証です。
 財政検証も少なくとも5年ごとに行うことが定められています。平成16年の改正の5年後である平成21年に、最初の財政検証が実施されました。その後、平成26年に実施され、さらに5年後の令和元年にも実施されました。
 このように定期的に年金財政の持続性をチェックすることから、年金財政の定期健康診断ともいわれます。
 財政検証に関して詳しくは、厚生労働省ホームページの「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)」に掲載されている各種資料をご覧ください。

6 財政検証って何をチェックするの?

マクロ経済スライドにより公的年金の所得代替率は徐々に低下します。モデル年金で将来にわたってこれが50%を維持できるかチェックするのが目的です。人口や経済が良好なら可能であることが示されています。

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 日本では世界に類を見ない少子高齢化が進行しています。そのような中でも将来にわたって年金の持続性を確保するため、公的年金の保険料(率)の上限が法定されており、その範囲内で給付を賄う方式が取られています。
 保険料の範囲内で将来にわたる給付を賄っていくため、給付水準を調整する必要があります。このためにマクロ経済スライドが行われています。
 財政検証では、向こう100年にわたる人口の見通しと一定の経済前提を置き年金財政がどのようになるのか明らかにします。そして、保険料(率)の上限の範囲で年金の持続性が確保できるかどうか、チェックします。持続性が確保できるかどうかのメルクマールが、将来にわたって公的年金の所得代替率50%以上を維持できるかどうかです。
 公的年金においては、モデル年金額(夫が40年間平均的な報酬水準で勤務した世帯における夫の老齢厚生年金と夫婦2人の老齢基礎年金を合算した額)の、男性厚生年金被保険者の平均的な標準報酬額(公租公課を控除した手取り額)に対する比率が50%以上となるような給付水準を将来にわたり確保することとされています。仮に将来、次期財政検証までの間、すなわち、5年以内に50%を下回ることが見込まれることとなる場合は、政府は、給付と負担にあり方について検討の上、所要の措置を講ずることが規定されています。
 直近の財政検証である令和元年財政検証の結果を見ると、5年以内に50%を割り込むことはありません。人口が中位の場合、経済成長と労働参加が進む場合は、将来にわたって50%が確保されます。そうでなければ、経済成長と労働参加が一定程度進んでも、いずれこれを割り込むことが示されています。
 必要に応じマクロ経済スライドって何?所得代替率って何?をご覧ください。

7 どうやって将来を見通すの?

人口や労働力率から被用者の数を推計し、推計の出発時点の報酬額と賃金上昇率などから保険料収入や運用収入を求め、また将来の年金支出額を求めることにより、公的年金の収支見通しを作成します。

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 財政検証は、向こう100年にわたる年金財政の姿を明らかにするものです。年金財政の将来見通しに必要なのは、将来の被保険者数と受給者数、そして、保険料収入、運用収入、年金給付支出です。これらを導き出すためには、人口の見通しと経済の前提が必要です。
 将来の人口や経済の動向は不確実なものであり、長期的な見通しには限界があります。財政検証の結果は、人口や経済を含めた将来の状況を正確に見通す予測というよりも、人口や経済等に関して現時点で得られるデータを一定のシナリオに基づき将来の年金財政へ投影するものという性格に留意が必要です。
 人口については、国立社会保障・人口問題研究所が5年ごとに公表する「日本の将来推計人口」に準拠します。経済前提については、財政検証の都度、専門家による議論と検討に基づいて設定します。
 直近の財政検証である「令和元年財政検証」では、人口については、「日本の将来推計人口(平成29年推計)」が使用されています。経済については、2028年度までは、内閣府「中長期の経済財政に関する試算(令和元年7月31日)」に準拠し、その後は、マクロ経済に関する試算に基づいています。
 将来の厚生年金被保険者数は、人口中でどれくらい労働参加が進むかにかかっています。これに関する労働力率の前提は、(独)労働政策研究・研修機構の「労働力需給の推計(2019年3月)」に準拠しています。
 このような枠組みをもとに、将来の技術進歩等を軸に幅の広い6ケースが設定されています。労働力率の前提でこれを大別して「経済成長と労働参加が進むケース」、「経済成長と労働参加が一定程度進むケース」、「経済成長と労働参加が進まないケース」の3つに分かれています。
 推計の出発時点は直近の国民年金・厚生年金の実績値です。将来の被保険者数と賃金上昇率や経済成長率などから保険料収入や運用収入を求め、また将来の年金支出額を求めます。これにより、将来における公的年金の収支見通しを作成します。

8 財政検証では、人口はどんな前提になっているの?

人口は国立社会保障・人口問題研究所の将来推計を用いています。出生と死亡について高位・中位・低位の3つの仮定がありますが、これからも少子高齢化は続き、日本の総人口は徐々に減少すると見込まれています。

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 人口については、国立社会保障・人口問題研究所が5年ごとに公表する「日本の将来推計人口」に準拠します。直近の財政検証である「令和元年財政検証」では、「日本の将来推計人口(平成29年推計)」が使用されています。この推計では、2015(平成27)年の国勢調査を出発点とし、50年先までの2065年までの推計を行うとともに、その後前提を一定にした参考推計として、2115年までの数値が公表されています。
 推計に当たっては、出生と死亡について高位・中位・低位の3つの仮定が置かれています。出生については、合計特殊出生率(1人の女性が平均して生涯何人の子を出産するかという指数、2015年は1.45)を、中位で1.44、高位1.65、低位1.25と設定するなどの前提が設けられています。死亡については、平均寿命(2015年は男80.75年、女86.99年)が、2065年で、中位で男84.95年、女91.35年などの前提が設けられています。
 いずれのケースでも人口の少子高齢化が続き、総人口は出生・死亡中位で、2053年に1億人を割り込み、2065年に8,808万人になると見込まれます。そして、2115年には、5,056万人となっています。
 65歳以上人口の比率は、2025年に30.0%になり、2065年には38.4%に達すると見込まれています。その後も38%台前半で推移し、2115年では38.4%となっています。

9 財政検証では、経済はどんな前提になっているの?

将来の技術進歩等を軸に幅の広い6ケースが設定されています。大別すると「経済成長と労働参加が進むケース」、「経済成長と労働参加が一定程度進むケース」、「経済成長と労働参加が進まないケース」になります。

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 経済前提については、財政検証の都度、専門家による議論と検討に基づいて設定します。直近の財政検証である「令和元年財政検証」では、2028年度までは、内閣府「中長期の経済財政に関する試算(令和元年7月31日)」に準拠し、その後は、マクロ経済に関する試算(コブ・ダグラス型生産関数を用いた長期的な経済成長率等の推計)に基づき設定されています。
 将来の厚生年金被保険者数は、人口中でどれくらい労働参加が進むかにかかっています。これに関する労働力率の前提は、(独)労働政策研究・研修機構の「労働力需給の推計(2019年3月)」に準拠しています。
 長期的な経済状況を見通すうえで重要となる技術進歩等(全要素生産性上昇率)については、1.3%から0.3%まで幅広い条件が仮定されています。これらをもとに、ケースⅠ~ケースⅥの合計6通りのケースが設定されています。
 労働力率の前提でこれを大別して、「経済成長と労働参加が進むケース」(ケースⅠ~ケースⅢが該当)、「経済成長と労働参加が一定程度進むケース」(ケースⅣ、ケースⅤが該当)、「経済成長と労働参加が進まないケース」(ケースⅥが該当)の3つに分かれています。
 詳しくは、社会保障審議会年金部会の年金財政における経済前提に関する専門委員会による「 年金財政における経済前提について(検討結果の報告)(2019(平成31)年3月13日)」及び「2019(令和元)年財政検証に用いる経済前提における内閣府の「中長期の経済財政に関する試算(2019年7月)」の取扱いについて(2019(令和元)年8月16日)」をご覧ください。

10 オプション試算も行われたそうだけど、それは何?

財政検証はあくまで現行制度に基づく財政の将来見通しです。これに対し、最近議論されている幾つかの制度改革の課題について、制度改正を仮定した場合の試算がオプション試算として示されています。

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 財政検証はあくまで現行制度を前提として、財政の将来見通しを作成するものです。これに対し、オプション試算は一定の制度改正を仮定した試算です。前回の平成26年財政検証において初めて実施されましたが、今回も、法律で要請される現行制度に基づく財政検証に加えて実施されました。
 今回は、具体的には次のようなオプション試算が実施され、それぞれ、マクロ経済スライドの終了時期や終了後の給付水準等について試算が行われています。

 オプションA:被用者保険のさらなる適用拡大
  適用拡大①(125万人ベース):企業規模要件を廃止
  適用拡大②(325万人ベース):賃金・企業規模要件を廃止
  適用拡大③(1,050万人ベース):月5.8万円以上の全被用者
 オプションB:保険料拠出期間の延長と受給開始時期の選択
  ①基礎年金の拠出期間延長(40年から45年に)
  ②在職老齢年金の見直し(緩和・廃止)
  ③厚生年金の加入年齢の上限の引上げ(70歳から75歳へ)
  ④就労延長と受給開始時期の選択肢の拡大(繰下げ75歳へ)
  ⑤上記④に①~③の制度改正を加味

いずれも公的年金財政の持続性確保に一定の効果があることが示されており、今後の年金制度改正の基本的方向を示すものと考えられます。
 詳しくは、厚生労働省ホームページの「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)」に掲載されているオプション試算関係の資料をご覧ください。

12 積立金はどこが運用しているの?

国民年金と厚生年金の積立金は法律に基づき国から運用寄託を受けた年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用を行っています。公務員等の積立金は各共済組合の連合体などで運用を行っています。

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 公的年金の積立金は、かつては全額が政府の資金運用部に預託されていました。しかし、財政投融資制度の改革に伴い、平成13年度から年金特別会計が直接運用する自主運用が始まりました。今日では、年金特別会計に集められた国民年金と厚生年金の積立金は、法律に基づき国から運用寄託を受けた年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用を行っています。
 ただし、国家公務員、地方公務員及び私立学校教職員に係る厚生年金の積立金は、国家公務員共済組合連合会、地方公務員共済組合連合会、日本私立学校振興・共済事業団などが運用を行っています。

14 運用の基本的な考え方はどうなっているの?

積立金の運用は、専ら被保険者の利益のために、長期的な観点から、安全かつ効率的に行うことが求められています。このため、GPIFでは長期的に維持すべき資産構成割合を基本ポートフォリオとして定めています。

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 法律により、公的年金の積立金の運用は、積立金が被保険者から徴収された保険料の一部であり、かつ、将来の給付の貴重な財源になるものであることに特に留意し、専ら被保険者の利益にために、長期的な観点から、安全かつ効率的に行うべきことが定められています。
 運用の対象は、基本的には国内債券、国内株式、外国債券、外国株式です。安全かつ効率的な運用を行うためには、これらに分散投資を行うことが必要であり、GPIFでは、これらについて、長期的に維持すべき資産構成割合を基本ポートフォリオとして定めています。その構成割合(カッコ内は乖離許容幅)は次の通りです。

  ①国内債券:25%(±7%)
  ②外国債券:25%(±6%) ①②(±11%)
  ③国内株式:25%(±8%)
  ④外国株式:25%(±7%) ③④(±11%)

 実際の運用は信託銀行や投資顧問会社に委託して行うのが基本ですが、一部国内債券はGPIFが自家運用しています。資産構成割合が基本ポートフォリオの乖離許容幅の範囲内に収まるよう、適時適切にリバランスが行われています。

16 最近ESG投資が始まったそうだけど、それは何?

ESGとは環境、社会、(企業の)統治のそれぞれの英語の頭文字です。投資先企業の利益率や売上げといった財務情報だけでなく、それらの情報を考慮することで、長期的に安定な収益確保を目指します。

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 「ESG」は、環境、社会、統治の英語(Environment、Social、Governance)の頭文字です。統治は、投資先となる企業の統治(コーポレート・ガバナンス)を意味します。ESG 投資とはそれらを考慮した投資のことです。
 投資の意思決定に ESG の課題を組み込むことなどを宣言する責任投資原則(Principles for Responsible Investmentの頭文字を取って「PRI」と略称されます。)が 2006年に国連の専門組織(UN Global Compact及びUNEP Financial Initiative)から提唱されました。ESG 投資という投資概念が生まれたのは、これ以降です。
 従来の投資が投資先企業の利益率や売上げといった財務情報に主に注目していたのに対し、ESGという非財務情報は、環境問題や社会問題、企業統治に対する企業の姿勢や取組みに関わる情報と考えることができます。これらは直ちに利益率や売上を左右するものではなくとも、企業の社会的評価や事業リスクなど長期的な発展の可能性に関係する可能性があります。これらの情報を考慮することは、長期的に安定な収益確保につながると考えられます。なお、ESG 投資は、運用成果を犠牲にしてまでESGの課題に取り組むというものではありません。
 最近まで、日本ではESG投資はあまり活発ではありませんでした。しかし、GPIFが平成27年9月にPRIに署名して以降、日本でもESG投資に対する関心が高まってきています。平成29 年 7 月には GPIF から、3 つの ESG 指数を選定しこれに連動したパッシブ運用を開始したことが発表されました。平成30年9月にはグローバル環境株式関連の2指数の追加が発表されたのに続き、令和2年12月には外国株式を対象とする2指数、令和4年3月には国内株式を対象とする1指数、令和5年4月にはジェンダー・ダイバーシティに着目した国内株式を対象とする1指数の採用が発表されました。今後は企業年金やイデコを含めた幅広い広がりが期待されます。