2 制度体系について

1 国民年金と厚生年金はどう違うの?

いずれも公的年金の制度です。国民年金は全国民が加入する制度で、基礎年金を受給します。厚生年金は会社や役所に就職したら加入する制度で、基礎年金に加え報酬比例の2階建ての年金を受給します。

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 国民年金と厚生年金はいずれも公的年金の制度です。このうち国民年金は日本に住所を有する20歳以上59歳以下のすべての人が被保険者として加入します。国民年金の被保険者は、第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者の3つの適用種別があります。年金としては全国民共通の基礎年金を受給します。基礎年金は保険料納付期間に応じた定額の年金です。老齢基礎年金の満額を受給するには40年間の保険料納付が必要ですが、未納期間があるなどの理由でこれに満たない人は、60歳から64歳までの間、任意で加入することができます。
 厚生年金は第2号被保険者が加入する制度です。会社や役所に正規に就職したら加入します。第2号被保険者は給与など報酬に比例した保険料を納付し、それに応じた報酬比例の年金である厚生年金を受給します。これは、全国民共通の基礎年金に加えて受給できますので、2階建ての年金ということができます。
 必要に応じ第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者とは何?をご覧ください。

2 国民皆年金ってどういうこと?

20歳以上の全ての国民が、一定の保険料納付を条件に、高齢者か障害者になると年金を受けられます。子どもは生計を維持する親が死亡すると遺族年金の対象になります。このように全国民に年金の保障があります。

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 国民皆年金という語が法令上に規定されているわけではありません。従って、厳密な定義があるわけではなく、一般的な用語です。
 もともとは、昭和36年に国民年金法が施行され、被雇用者以外の世帯にも拠出制の年金の適用が始まったことをもって、国民皆年金と呼ばれました。ただし、厚生年金被保険者の被扶養配偶者(いわゆるサラリーマンの妻)や学生は任意加入でした。ちなみに、このときは、医療保険では国民健康保険の全面実施が始まり、国民皆保険も実現しています。
 その後昭和60年及び平成元年の改正により、サラリーマンの妻や学生を含む日本国内に住所を有する20歳以上59歳以下のすべての人が国民年金の被保険者になりました。そして、一定の保険料納付を条件に、高齢者か障害者になると老齢基礎年金又は障害基礎年金を受けることができます。
 子どもには国民年金の適用はありませんので、保険料の納付義務はありませんが、生計を維持する親が死亡すると、遺族基礎年金が死亡した親の配偶者(残された片親)又は子ども自身(親がいない場合)に支給されます。
 このように全国民に年金の保障が及んでいます。これをもって、国民皆年金ということができると考えられます。

3 公的年金はどこが実施しているの?

国民年金と厚生年金の実施機関は厚生労働大臣です。実施のために日本年金機構という組織があります。ただし、公務員などの厚生年金に関しては各共済組合又はその連合体が実施機関となっています。

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 国民年金と厚生年金は政府が管掌する制度であり、実施機関は公務員などに係る厚生年金業務を除き厚生労働大臣です。厚生労働大臣は政府組織たる厚生労働省の長ですから、実施責任は政府が負い、厚生労働省が担当組織となります。
 実施のために日本年金機構という組織があります。日本年金機構は、法律に基づき、厚生労働大臣から、権限に係る事務の委任を受け、又は、事務の委託を受けて、年金の業務を行います。機構の役職員は、公務員ではありませんが、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなされます。役職員の服務は、国民の信頼を基礎として納付された保険料により運営される政府管掌年金事業の意義を自覚し、強い責任感をもって、誠実かつ公平に職務を遂行し、国民の信頼にこたえることを本務としなければならないと法定されています。また、秘密保持も義務付けられています。
 なお、公務員などの厚生年金に関しては、各共済組合又はその連合体が実施機関となっており、年金業務(基礎年金拠出金の納付を含みます)はそれらで実施されています。

4 国民年金と基礎年金はどう違うの?

国民年金は制度の名前であり、基礎年金は受給する年金の名前です。国民年金では上乗せ部分としての付加年金などもありますが、その支給はごく一部ですので、通常は国民年金の給付は基礎年金と同一視されています。

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 国民年金は制度の名前です。法律として、国民年金法が制定されています。
 基礎年金は、国民年金法に基づき受給することができる年金の名前です。保険料の納付を前提に、65歳に到達すると老齢基礎年金を、一定の障害者になると障害基礎年金を、死亡すると死亡した者が生計を維持していた18歳以下の子のある配偶者又はそのような配偶者がいない場合は18歳以下の子自身が遺族基礎年金を、それぞれ受給することができます。
 国民年金法においては、基礎年金の他、付加年金、寡婦年金及び死亡一時金が法律上の給付として規定されています。このように国民年金には各種の給付がありますが、主要な給付は基礎年金です。このことから、通常は国民年金の給付は基礎年金と同一視されています。
必要に応じ付加年金とは何?寡婦年金とは何?死亡一時金とは何?をご覧ください。

5 会社には必ず厚生年金があるの?

法律上、法人の事業所にはたとえ従業員が1人でも厚生年金が強制適用されます。個人事業の場合は、5人未満の小規模事業所には適用されないことがあります。

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 株式会社などの法人の事業所又は事務所で、常時従業員を使用する場合は、法律上厚生年金が強制適用されます。たとえ従業員が1人でも、またそれが事業主だけであっても、事情は変わりません。常時使用とは、使用関係が常用的であることをいいます。試用期間中や有期雇用であっても、労働時間や勤務日数が一般社員の3/4以上であれば厚生年金が適用されるのが原則です。ただし、2か月以内の有期雇用の場合はこの限りではありません。
 一方、個人事業については、事業主は国民年金第1号被保険者ですが、常時従業員を5人以上使用する場合、従業員は厚生年金が強制適用になります。ただし、5人以上の個人事業所であってもサービス業の一部(クリーニング業、飲食店、ビル清掃業等)や農業、漁業等は、その限りではありません。
 強制適用にならない場合でも、使用される者の半数以上の同意を得て申請すれば、厚生労働大臣の認可を得て任意適用事業所となることができます。
 厚生年金が適用される法人又は個人事業主は、常用的に従業員を使用することになる(すなわち採用する)都度、年金事務所に対し、事実の発生から5日以内に、所用の手続きをする必要があります。手続きについては、最寄りの年金事務所にお問い合わせください。
 以上が法令上の原則ですが、現実には必ずしもこの通りに適用が行われていない実態もあるといわれています。本来厚生年金が適用されるべき事業所や事務所で、適用がされていないと思われる方は、必要に応じ年金事務所にご相談されることをお勧めします。

6 共済年金が厚生年金になるってどういうこと?

共済年金として、国家公務員、地方公務員、私立学校教職員の3つの制度がありました。これらは平成27年10月に厚生年金に統合され、それ以後は、これらの職業についている人も厚生年金に加入します。

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 国家公務員、地方公務員、私立学校教職員の方々は、以前は、厚生年金ではなくそれぞれの共済年金に加入していました。共済年金が厚生年金に統合されるいわゆる被用者年金一元化が実施されることになり、平成24年に社会保障・税一体改革の一環として関係法律が成立しました。
 この法律が平成27年10月から施行され、従来の共済年金加入者は厚生年金の被保険者となりました。これに伴い、民間会社の正社員である従来からの厚生年金被保険者は第1号厚生年金被保険者に、国家公務員共済組合の組合員は第2号厚生年金被保険者に、地方公務員共済組合の組合員は第3号厚生年金被保険者に、私立学校教職員共済制度の加入者は第4号厚生年金被保険者になります。
 給付や保険料は原則として厚生年金に揃えることになりました。従来から共済年金にあった公的年金としての3階部分(職域部分)は廃止され、廃止後の新たな年金として、退職等年金給付(年金払い退職給付)がスタートしました
 実施機関としては、共済組合等が規定されています。従って、公務員等であった方の年金の手続きは、引き続き共済組合を通じて行うことが可能です。また、ワンストップサービスが始まっていますので、日本年金機構の窓口(年金事務所)でも可能です。
 被用者年金一元化の概要や関係条文については、厚生労働省のホームページに掲載されている年金制度の改正について(社会保障・税一体改革関連)にある「被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律(平成24年法律第63号)」の欄をご覧ください。

7 日本の年金制度が3階建てとはどういうこと?

被用者の年金制度をそう呼ぶことがあります。全国民共通の基礎年金に加え、厚生年金からは報酬比例年金が給付されます。さらに、企業によっては企業年金を実施するところがあり、これが3階部分にあたります。

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 被用者は、国民年金法上は第2号被保険者となり、厚生年金が適用されます。老齢、障害又は死亡という年金給付事由が生じた場合は、全国民共通の基礎年金に加え、報酬比例の厚生年金を受給することができます。従って、公的年金としては、被用者の年金制度は2階建てとなります。
 さらに、勤務する会社によっては、企業年金を実施するところがあります。企業年金は、大別すると、確定給付企業年金、確定拠出年金、厚生年金基金の3種類があります。ただし、今日では厚生年金基金の新設は認められていません。企業年金を実施するかどうかは企業の任意であり、複数を同時実施することも可能です。また、企業年金の有無にかかわらず、個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)に加入することが可能です。
 公務員等については、職域部分(廃止されましたが、経過的に支払いは続きます。)やそれに代わって新たにスタートした退職等年金給付(年金払い退職給付)の制度があります。また、iDeCoへの加入も可能です。
 これらの企業年金などはそれぞれ法律に基づくものです。これが3階部分になります。
 必要に応じ確定給付企業年金とは何?確定拠出年金とは何?厚生年金基金とは何?個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)とは何?をご覧ください。

8 公的年金の上乗せをする年金にはどんなものがあるの?

会社勤めの場合、企業年金がある場合があります。また、企業年金の有無にかかわらず個人型確定拠出年金への加入が可能です。自営業などの人には国民年金基金や個人型確定拠出年金があります。

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 会社勤めの方にとっては、会社によって企業年金を実施している場合があります。企業年金は、大別すると、確定給付企業年金、確定拠出年金、厚生年金基金の3種類があります。ただし、今日では厚生年金基金の新設は認められていません。企業年金を実施するかどうかは企業の任意であり、複数を同時実施することも可能です。
 お勤めの会社で企業年金を実施する場合は、通常その説明がありますが、特に説明がなければ会社に確認されるとよいでしょう。また、企業年金の有無にかかわらず、個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)に加入することが可能です。
 公務員等については、職域部分(廃止されましたが、経過的に支払いは続きます。)やそれに代わって新たにスタートした退職等年金給付(年金払い退職給付)の制度があります。また、iDeCoへの加入も可能です。
 自営業などの人には、任意で基礎年金に上乗せをできる制度として、付加年金の他に国民年金基金やiDeCoがあります。なお、国民年金基金は付加年金を代行するという制度の趣旨から、付加保険料を支払っている方は国民年年金基金に同時に加入することはできませんが、iDeCoはそのような関係にはありませんので、付加保険料を支払いつつ加入することが可能です。国民年金基金とiDeCoは、拠出限度額(月額68,000円)の範囲内で、同時加入が可能です。
 必要に応じ確定給付企業年金とは何?確定拠出年金とは何?厚生年金基金とは何?個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)とは何?付加年金とは何?国民年金基金とは何?をご覧ください。

9 国民年金や厚生年金とその「基金」とは違うの?

よく似た名前ですが、国民年金と国民年金基金、厚生年金と厚生年金基金は違います。国民年金と厚生年金は公的年金の制度であり、国民年金基金や厚生年金基金は公的年金に上乗せされる年金の制度です。

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 国民年金基金は国民年金法に基づいており、基礎年金に上乗せされる制度です。厚生年金基金は厚生年金保険法(平成25年改正法附則)に基づいており、厚生年金に上乗せされる企業年金の制度です。
 必要に応じ国民年金基金とは何?厚生年金基金とは何?をご覧ください。

10 確定給付企業年金とは何?

DBとも呼ばれ、最も普及している企業年金制度です。あらかじめ定められた給付に対し必要な掛金を負担していきます。積立金の運用収入の見込みである予定利率が重要な役割を果たします。

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 確定給付は英語ではDefined Benefitといいます。このことから、確定給付企業年金はしばしばDBと略称されます。確定給付とは、給付があらかじめ定まっているという意味です。これを将来的に賄っていくよう必要な掛金を負担します。
 DBは、確定給付企業年金法に基づく企業年金制度です。平成14年度からスタートしましたが、今日では最も普及している企業年金といえます。
 DBは、賦課方式の公的年金と異なり、積立方式で実施されます。積立金がありますので、運用収入の見込みである予定利率をどう見込むかによって、掛金の負担額が異なってきます。予定利率が大きければ、その分掛金を低くすることができます。しかし、予定利率を過大に見込むと、見込んだ運用収入が得られず将来追加掛金が必要になるだけでなく、リスクを大きく取った無理な運用になって、かえって追加掛金が拡大してしまうおそれがあります。
 ちなみに、確定給付に対比される概念として確定拠出があります。確定拠出は、負担があらかじめ定まっているという意味であり、運用結果に応じて給付が変化します。
 最近の経済環境や企業ニーズの変化を踏まえ、この確定拠出の特徴も併せ持つキャッシュバランスプラン(予定利率を固定的に設定するのではなく、上限と下限など一定のルールの下で国債利回りその他の市場金利に連動させるといったもの)が普及し始めています。また、平成29年1月から、将来の積立不足に対応するためのリスク対応掛金や、財政バランスが崩れた場合は給付調整を行うことで加入者も一定のリスクを負うリスク分担型企業年金の仕組みが導入されています。このように、DBの設計の選択肢は近時拡大される傾向にあります。

11 確定拠出年金とは何?

DCとも呼ばれ、21世紀に入り我が国に導入されました。毎月決まった掛金を拠出し、加入者がその運用の指図を行い、その運用結果を受給します。投資教育が重要といわれています。

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 確定拠出は英語ではDefined Contributionといいます。このことから、確定拠出年金はしばしばDCと略称されます。確定拠出とは、拠出すなわち掛金があらかじめ定まっているという意味です。拠出された掛金は個人ごとに区分され、掛金と運用収益の合計をもとに給付額が決定されます。運用が好調なら多くの給付が得られますが、不調なら給付は低くなります。
 DCは、平成13年10月にスタートした確定拠出年金法に基づく、公的年金に上乗せされる年金です。企業年金として実施されるものが規模としては大きいのですが、個人で加入する個人型DCもあります。平成29年1月から、個人型DCの加入対象が第3号被保険者や公務員にも拡大され、公的年金に加入する60歳未満の全ての人が加入できるようになりました。この年齢は令和4年5月から65歳未満の公的年金加入者に引き上げられています。
 DCの掛金の限度額は、様々な場合に応じて細かく定められています。厚生年金被保険者については、DCを企業年金として実施する場合、勤務先が確定給付型の企業年金を実施していなければ月額55,000円、実施していれば月額27,500円です。なお、実施している場合の限度額は、令和6年12月からは、月額55,000円から他制度掛金相当額を控除した額となる予定です。
 掛金は原則企業が支払いますが、半額以内で従業員が支払うこと(これを「マッチング拠出」といいます)が可能です。
 企業年金としてのDCは、確定給付企業年金と異なり、予定した運用ができなくとも従業員が受け取る給付が低下するだけで、企業は追加掛金を払い込む必要はありません。また、運用自体、会社や基金でなく従業員が指図を行います。
 このため、従業員が適切に運用の指図を行うことができるよう、企業に対して従業員に対する投資教育の努力義務が法定されています。投資教育は、単に開始時に行うだけでなく、継続的に実施することが必要です。
 個人型DCについては、必要に応じ個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)とは何?をご覧ください。

12 厚生年金基金とは何?

企業年金制度の1つで、厚生年金の一部を代行する部分があることが特徴です。積立不足になる基金が多くなったことなどから、新設は認められていません。代行部分を国に返上すると、確定給付企業年金となります。

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 厚生年金基金は、企業年金を行うために、厚生労働大臣の認可を受けて、企業によって設立された公法人です。厚生年金基金は厚生年金の一部を国に代わって給付するとともに、さらに独自の上乗せ給付を行うことにより、従業員に対しより手厚い老後の所得を保障することを目的としています。厚生年金の一部を代行する部分があることが特徴であり、そのため、厚生年金基金を実施する事業所に対する厚生年金保険料率は、一般の料率より若干低く設定されています(この差を「免除保険料率」といいます)。企業は、厚生年金基金に対し、免除保険料率を上回る率で掛金を拠出し、これによって上乗せ給付が可能になります。
 この制度は昭和41年10月にスタートしました。かつては企業年金の中心的な制度でしたが、代行部分を持たない確定給付企業年金制度が平成14年度にスタートして以降、退職給付債務をより厳格に企業の財務諸表に反映する会計基準の変更などを背景に、代行部分を国に返上して確定給付企業年金に転換する動きが顕著となりました。
 さらに、長引く経済の低迷による運用不振のため積立不足になる基金が多くなったことに加え、平成24年1月に発覚したAIJ事件(AIJ投資顧問が、多額の運用損失を出していたにもかかわらず、顧客である年金基金には運用成績が好調であるかのごとき虚偽の運用報告を行っていたもの)が直接のきっかけとなって、制度全体の見直しが行われました。この結果、厚生年金基金に関する規定を厚生年金保険法本則から削除(附則に規定)するなどの法律改正を経て、平成26年度以降は、厚生年金基金の新設は認めず、健全な基金を除いて解散や他の企業年金への移行を促すよう、大きく政策の方向が転換しています。

13 付加年金とは何?

国民年金の保険料を納付している人に向けた、任意で老齢基礎年金に上乗せできる年金です。月400円を支払うことによって、40年加入で65歳から月8千円を老齢基礎年金に加えて受け取ることができます。

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 付加年金は、国民年金第1号被保険者のための、任意で老齢基礎年金に上乗せできる年金です。月額400円の付加保険料を支払うことにより、基礎年金の受給時に、「200円×付加保険料の納付月数」に相当する額の付加年金を同時に受給することができます。例えば、40年(480月)納付すると、付加年金の額は96,000円(月額8,000円)となります。
 付加保険料は、国民年金保険料に加えて納付するものですので、低所得などのために国民年金保険料の納付の免除や猶予を受けている間は、納付することができません。また、国民年金第1号被保険者のための任意で老齢基礎年金に上乗せできる年金として国民年金基金がありますが、これは付加年金を代行すると位置づけられているため、国民年金基金に加入すると、付加保険料を支払うことはできません。なお、同じような上乗せできる年金に個人型確定拠出年金もありますが、こちらはそのような位置づけではありませんので、加入しつつ付加保険料を支払うことが可能です。
 付加年金については、給付費の1/4が国庫負担になっています。
 必要に応じ国民年金基金とは何?個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)とは何?をご覧ください。

14 国民年金基金とは何?

国民年金の保険料を納付している人に向けた、付加年金に代わる老齢基礎年金の上乗せの年金です。掛金の上限は月6.8万円で、掛金は全額が所得税非課税となります。若いほど掛金が安く設定されています。

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 国民年金基金は、国民年金第1号被保険者のための、任意で老齢基礎年金に上乗せできる年金です。同趣旨の制度に付加年金がありますが、これを代行し、より充実した老後所得保障を図るための制度として、平成3年度にスタートしました。
 付加年金を代行するという制度の位置づけから、国民年金基金に加入すると付加保険料を納めることはできなくなります。また、低所得などのために国民年金保険料の納付の免除や猶予を受けている間は、加入することができません。
 加入は口数制となっており、最初に選ぶ1口目は終身年金で、保証期間(保証期間内に死亡すると遺族に遺族一時金が支給される)があるA型と保証期間のないB型のいずれかを選びます。2口目以降は終身/有期、保証期間有(5~15年)/無の種々の型から、掛金の上限の範囲で選ぶことが可能です。
 国民年金基金の掛金の上限は月額68,000円です。掛金の額は、選択した給付の型、加入口数、加入時の年齢、性別によって決まります。受給までの期間が長くなる低年齢者ほど、また、平均余命の短い男性の方が女性より掛金が安く設定されています。税制上掛金は全額が社会保険料控除になり、所得控除の対象となります。
 国民年金基金は、任意で老齢基礎年金に上乗せできる年金である個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)と同時に加入することができます。同時に加入する場合は、両方の掛金の合計が月額68,000円以内となるようにする必要があります。
 必要に応じ付加年金とは何?個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)とは何?をご覧ください。

15 個人型確定拠出年金(iDeCo・イデコ)とは何?

個人で加入する確定拠出年金(愛称はiDeCo)です。掛金の上限は、国民年金保険料を納付している人は国民年金基金と合わせて月6.8万円、専業主婦(夫)は月2.3万円など細かく決まっています。

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 個人型確定拠出年金(個人型DC)は、加入者個人が拠出する確定拠出年金です。もともと、国民年金第1号被保険者か企業年金がない会社に勤める厚生年金被保険者のための、任意で公的年金に上乗せできる確定拠出年金としてスタートしました。ライフコースの多様化への対応の観点から、平成29年1月より、第3号被保険者や公務員等共済加入者も含め、公的年金に加入する60歳未満の全ての人が加入できるようになりました。これに先立って、個人型DCの愛称が募集され、iDeCo(イデコ)とすることが平成28年9月に決まりました。また、令和4年5月からは65歳未満の公的年金加入者へと加入できる年齢が引き上げられています。これらに伴って、近年、個人型DCの加入者数がかなり増えつつあります。
 国民年金第1号被保険者は、掛金の上限が月額68,000円です。同時に国民年金基金への加入や付加保険料の支払いが可能ですが、その場合は、これらの掛金等の合計が68,000円以内となるようにする必要があります。
 専業主婦(夫)又は企業年金がない会社に勤める厚生年金加入者は、掛金の上限が月額23,000円です。他の厚生年金加入者のうち、確定拠出型の企業年金のみがある会社に勤める場合は月額20,000円、確定給付型の企業年金がある会社に勤めるか公務員は月額12,000円が上限になります(ただし、確定拠出型の企業年金への事業主の拠出額が35,000円(確定給付型の企業年金を併用する場合は15,500円)を超えると、限度額が逓減します)。なお、令和6年12月から、企業年金加入者の掛金限度額を公平化する観点から、確定拠出型、確定給付型を問わず、企業年金のある会社に勤めるか公務員の掛金の上限は、月額2万円(ただし、確定給付型および確定拠出型の企業年金に対する事業主の拠出額の合計が35,000円を超えると限度額が逓減します)となる予定です。
 税制上個人型確定拠出年金の掛金は小規模企業共済等掛金控除になり、所得控除の対象となります。
 さらに、平成30年5月から、従業員100人以下の中小企業に限り、iDeCoに加入する従業員が拠出する掛金に、事業主が追加して掛金拠出できる「iDeCo+(イデコプラス)」が始まりました。令和2年10月からは従業員300人以下の企業にまで拡大されています。
 必要に応じ確定拠出年金とは何?をご覧ください。

16 年金生活者支援給付金とは何?

年金を含めても所得が低く、支援が必要な人に対し、年金に上乗せして月額5千円程度が支給されるものです。消費税率が10%に引き上げられるのに合わせ、令和元年10月から実施されています。

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 年金生活者支援給付金は低所得の年金受給者に対する給付金です。①老齢年金生活者支援給付金、②補足的老齢年金生活者支援給付金、③障害年金生活者支援給付金、④遺族年金生活者支援給付金の4種類があります。
 ①は、65歳以上の老齢基礎年金の受給者で、前年の公的年金の収入金額と他の所得の合計額が781,200円以下、世帯員全員が市町村民税非課税の場合に支給されます。令和4年度の給付額(月額)は次の通りです。
  5,140円×保険料納付済期間(月数)/480月
ただし、保険料免除期間を有する場合は、これに次を合算します。
  老齢基礎年金満額の1/6の額である11,041円(68歳以上の者は11,008円、保険料1/4免除期間の場合は1/12の額である5,520円(68歳以上の者は5,504円))×保険料免除期間(月数)/480月
 ②は、前年の公的年金の収入金額と他の所得の合計額が781,200円を超え881,200円までの者に対し、①の受給者との所得総額が逆転しないよう、補足的な給付を支給するものです。給付の額は、所得の増加に応じて逓減します。
 ③と④は、それぞれ障害基礎年金又は遺族基礎年金の受給者であって、前年の所得が4,721,000円(扶養親族がいるときは、これに扶養親族1人当たり38万円、ただし、扶養親族が70歳以上の同一生計配偶者か老人扶養親族の場合は48万円、特定扶養親族又は16歳以上19歳未満の扶養親族の場合は63万円を加算した額)以下の場合に支給されます。令和5年度の給付額(月額)は5,140円(障害等級1級の場合はその1.25倍の6,425円)です。
 なお、以上の「5,140円」は、法律上は「5,000円」を毎年度、物価変動に応じて改定するとされているものです。本制度について詳しくは厚生労働省ホームページにある年金生活者支援給付金制度特設サイトをご覧ください。
 年金生活者支援給付金制度は平成24年の社会保障・税一体改革の一環として制定されました。消費税率が10%に引き上げられるのに合わせ、令和元年10月から実施されています。