6 障害給付について

1 障害年金とはどんな年金?

障害の原因になる病気やけがについて初めて治療を受けた日(初診日)から1年半経過するか、それより早く治った場合は治ったときに、一定の障害等級に該当していれば支給される年金です。

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 障害年金は被保険者が一定の障害状態になった場合に受け取ることができる年金です。一定の障害状態とは、障害等級表に該当する状態をいいます。障害基礎年金と障害厚生年金とがあり、受給要件が異なります。
 障害状態については、その原因となった病気やけがが特定されることが通常です。その病気やけがについて初めて治療を受けた日(これを初診日といいます)に公的年金制度の被保険者であることが要件になります。ただし、国民年金第1号被保険者であった者は、60歳以降老齢基礎年金を受給するまでの間に初診日がある病気やけがで障害状態になっても、障害基礎年金の支給対象となります。また、20歳前から障害状態にある方に対しては、保険の考え方からは給付対象外ですが、社会保障として無年金障害者を発生させないという観点や国民皆年金の理念を踏まえ、一定の所得制限のもとに障害基礎年金が支給されます。
 障害状態は病気やけがの後遺症の程度で判定します。従って、病気やけがが治った段階で、障害等級に該当しているかどうか、また、それが何級か判定されます。ただし、治療が長引くなどして症状が固定しない場合であっても、初診日から1年半経過した段階で判定が行われます。治った日か1年半経過した日を障害認定日といいます。
 障害基礎年金は1級と2級の障害が対象です。これに対し障害厚生年金は3級まで対象になります。このため、1級か2級の場合は両方の年金を受け取ることができます。
 必要に応じ障害基礎年金はどんな場合にもらえるの?、あるいは障害厚生年金はどんな場合にもらえるの?子供の時から障害があっても、障害年金はもらえるの?をご覧ください。

2 障害基礎年金はどんな場合にもらえるの?

国民年金に加入中か60歳以降老齢基礎年金を受給するまでの間に初診日がある病気やけがで1級又は2級の障害等級に該当すると受給できます。ただし、国民年金保険料の未納の期間が一定以内であることが必要です。

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 障害基礎年金の受給要件は、①国民年金の被保険者であるか60歳以降老齢基礎年金を受給するまでの間に初診日がある病気やけがで障害状態になったこと、②その障害の程度が障害等級表の1級又は2級に該当すること、③初診日までの国民年金被保険者期間中に保険料未納期間が1/3を超えないことです。
 ここに、初診日とは障害の原因になった病気やけがについて初めて治療を受けた日をいいます。また、障害等級表に該当するかどうかは、その病気やけがが治った段階で判定されます。ただし、治療が長引くなどして症状が固定しない場合であっても、初診日から1年半経過した段階で判定が行われます。治った日か1年半経過した日を障害認定日といいます。
 なお、③については、経過措置で、令和8年4月1日より前に初診日がある病気やケガについては、初診日前の1年間のうちに未納期間がなければよいことになっています。
 必要に応じつい保険料を未納にしていたけど、障害年金は受け取れる?をご覧ください。

3 障害厚生年金はどんな場合にもらえるの?

厚生年金加入期間中に初診日のある障害で1級から3級までの障害等級に該当すると受給できます。1級と2級の場合は障害基礎年金を同時に受けられますが、3級は障害厚生年金だけです。

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 障害厚生年金の受給要件は、①厚生年金の被保険者である間に初診日のある病気やけがで障害状態になったこと、②その障害の程度が障害等級表の1級、2級又は3級に該当すること、③初診日までの国民年金被保険者期間中に保険料未納期間が1/3を超えないことです。
 ここに、初診日とは障害の原因になった病気やけがについて初めて治療を受けた日をいいます。また、障害等級表に該当するかどうかは、その病気やけがが治った段階で判定されます。ただし、治療が長引くなどして症状が固定しない場合であっても、初診日から1年半経過した段階で判定が行われます。治った日か1年半経過した日を障害認定日といいます。
 ②については、1級と2級は国民年金と共通であることから、障害基礎年金と併せて受給できます。3級の場合は障害厚生年金だけを受給します。
 なお、③については、厚生年金加入中も国民年金第2号被保険者期間であり、国民年金被保険者期間に算入されます。また、経過措置で、令和8年4月1日より前に初診日がある病気やケガについては、初診日前の1年間のうちに未納期間がなければよいことになっています。
 必要に応じつい保険料を未納にしていたけど、障害年金は受け取れる?をご覧ください。

4 障害基礎年金の額はどのように決まるの?

2級の障害は老齢基礎年金満額相当(月6.5万円)、1級はその1.25倍(月約8.1万円)です。なお、18歳以下の子があるときは、その数に応じ、一定額が加算されます。

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 障害基礎年金の額は老齢基礎年金満額相当額が基本となります。基本となる年金額は、次のように算定します。

  年金額=780,900円×改定率

 ここに改定率とは、平成16年度を1とし、毎年度、物価や賃金の変動に伴って改定される率のことです。令和5年度の改定率は、1.018(67歳以下の者、68歳以上の者は1.015)です。従って、同年度における年金額は795,000円(68歳以上の者は792,600円)、月額は66,250円(68歳以上は66,050円)になります。
 2級の場合はこの額です。1級の障害基礎年金はこの額の1.25倍(993,750円、月額82,813円、ただし、68歳以上は990,750円、月額82,560円)です。
 なお、18歳以下の子(詳しくは、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか、20歳未満で障害等級の1級又は2級に該当する未婚の子)があるときは、第2子まで子1人当たり「224,700円×改定率」(従って、令和5年度は228,700円、月額19,058円)、第3子以降は1人当たり「74,900円×改定率」(令和5年度は76,200円、月額6,350円)が加算されます。
 必要に応じ基礎年金とはどういう年金?をご覧ください。

5 障害厚生年金の額はどのように決まるの?

2級と3級は老齢厚生年金相当(加入期間が短いときは300月で計算)、1級はその1.25倍です。1級か2級で配偶者を扶養するときは加給されます。3級には障害基礎年金2級の3/4相当が最低保障されます。

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 障害厚生年金の額は老齢厚生年金の額に準じます。厚生年金は、給与等に比例する報酬比例年金です。基本的には次のように算定します。

  年金額=平均標準報酬額×0.005481×被保険者期間の月数

 ここに平均標準報酬額とは加入期間中の標準報酬額の累計額を被保険者期間の月数で除したものです。年金額の算式には、被保険者期間の月数を乗じる部分もありますので、結局、標準報酬額の累計額に千分の5.481を乗じたものになります。
 この千分の5.481は給付乗率と呼ばれます。これまで改正が重ねられており、生年月日によってこれよりも高いものを用いる様々な経過措置が定められています。標準報酬額は過去における物価や賃金の変動をもとに調整されます。
 加入期間が短い場合は、実際の被保険者月数に代えて300月で計算します。また、障害認定日以後の被保険者期間は計算の基礎とされません。
 1級の障害厚生年金は上記の年金額の1.25倍です。2級と3級は上記の年金額になります。ただし、3級の場合、この額が障害基礎年金額の3/4を下回るときは、当該3/4の額(令和5年度は596,300円(月額49,691円、ただし、68歳以上の者は594,500円、月額49,541円)が最低保障額になります。
 1級又は2級の障害厚生年金の受給者に生計を維持する配偶者があるときは、「224,700円×改定率」(令和5年度は228,700円、月額19,058円)の加給年金が加算されます。なお、子に対しては、障害基礎年金に子の加算があります。
 必要に応じ老齢厚生年金の額はどのように決まるの?をご覧ください。

6 子供の時から障害があっても、障害年金はもらえるの?

20歳前からある障害が1級又は2級に該当すると、障害基礎年金を受給できます。ただし、これは加入以後に発生した事象に対処するという保険の原則の例外であることから、一定の所得制限があります。

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 年金は保険としての性格を有しています。保険とは、大きな集団に対しては必ず発生するが、集団の中の誰に発生するか分からないリスクに、集団で備えるというものです。  20歳前から障害状態にある方に対しては、このような保険の考え方からは給付対象にはなりません。しかし、社会保障として無年金障害者を発生させないという観点や国民皆年金の理念を踏まえ、一定の所得制限のもとに、障害基礎年金が支給されます。  すなわち、20歳前からある障害が1級又は2級に該当することにより障害基礎年金を受給する者について、その者の前年の所得が、①370万4000円(扶養親族がいるときは、これに扶養親族1人当たり38万円、ただし、扶養親族が老人控除対象配偶者か老人扶養親族の場合は48万円、特定扶養親族の場合は63万円を加算した額)以下の時は全額支給、②この額を超え、472万1000円(扶養親族がいるときは①と同じ)以下の時は1/2、③②の額を超えるときは全額が、その年の8月から翌年7月まで支給停止となります。
 必要に応じ年金が保険とはどういうこと?国民皆年金ってどういうこと?をご覧ください。

7 つい保険料を未納にしていたけど、障害年金は受け取れる?

過去の国民年金加入期間中に保険料未納期間が1/3以上あると、障害状態になっても障害年金を受給できません。ただし、当分の間は、過去1年間に滞納がなければ受給は可能です。保険料はしっかり納めましょう。

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 障害基礎年金も障害厚生年金(障害手当金を含みます)も、初診日前日に、初診日が属する月の前々月までに国民年金被保険者期間があり、かつ、この期間中の保険料納付済み期間と免除期間を合算した期間が被保険者期間の2/3未満のときは、支給しないと定められています。すなわち、初診日の前々月までの被保険者期間中、保険料未納期間が1/3を超えると、受給できません。
 年金は保険としての性格を有しています。保険とは、大きな集団に対しては必ず発生するが、集団の中の誰に発生するか分からないリスクに、集団で備えるというものです。このことから、給付を受けるには、保険料を支払っていることが前提になります。この条件の基準として、被保険者期間中の2/3以上の保険料納付(免除)が定められています。
 2/3以上納付(免除)かどうか判定される期間は、初診日の前々月までの国民年金被保険者期間です。被保険者になって直後に初診日がある場合は、この要件は関係ありません。また、初診日を過ぎてから保険料を納付しても、この要件を満たす役には立ちません。事前にしっかり納めることが肝要です。
 厚生年金加入中も国民年金第2号被保険者期間であり、国民年金被保険者期間に算入されます。通常、厚生年金保険料は月々の給料から天引きされて会社を通じて支払われますので、その期間も保険料納付済み期間になります。
 なお、経過措置で、令和8年4月1日より前に初診日がある病気やケガについては、初診日の前々月までの1年間のうちに未納期間がなければよいことになっています。

8 1級はどの程度の障害?

他人の介助を受けなければ、ほとんど自分の用を弁ずることができない程度の状態をいいます。具体的には、両眼の視力がそれぞれ0.03以下、両手の指をすべて喪失、両足を足関節以上で喪失といった状態です。

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 国民年金法施行令別表で次のように定められています。詳細は障害認定基準をご覧ください。
 1 次に掲げる視覚障害
  イ  両眼の視力がそれぞれ 0.03 以下のもの
  ロ  一眼の視力が 0.04、他眼の視力が手動弁以下のもの
  ハ  ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のⅠ/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ 80 度以下かつⅠ/2視標による両眼中心視野角度が 28 度以下のもの
  ニ  自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が 70 点以下かつ 両眼中心視野視認点数が 20 点以下のもの
 2 両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの
 3 両上肢の機能に著しい障害を有するもの
 4 両上肢のすべての指を欠くもの
 5 両上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの
 6 両下肢の機能に著しい障害を有するもの
 7 両下肢を足関節以上で欠くもの
 8 体幹の機能に座つていることができない程度又は立ち上がることができない程度の障害を有するもの
 9 前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であつて、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
 10 精神の障害であつて、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
 11 身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であつて、その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの

9 2級はどの程度の障害?

必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、就労ができない程度の状態をいいます。具体的には、両眼の視力がそれぞれ0.07以下、片手のすべての指を喪失、片足を喪失といった状態です。

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 国民年金法施行令別表で次のように定められています。詳細は障害認定基準をご覧ください。
 1 次に掲げる視覚障害
  イ  両眼の視力がそれぞれ 0.07 以下のもの
  ロ  一眼の視力が 0.08、他眼の視力が手動弁以下のもの
  ハ  ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼のⅠ/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ 80 度以下かつⅠ/2視標による両眼中心視野角度が 56 度以下のもの
  ニ  自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が 70 点以下かつ 両眼中心視野視認点数が 40 点以下のもの
 2 両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの
 3 平衡機能に著しい障害を有するもの
 4 そしやくの機能を欠くもの
 5 音声又は言語機能に著しい障害を有するもの
 6 両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠くもの
 7 両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の機能に著しい障害を有するもの
 8 一上肢の機能に著しい障害を有するもの
 9 一上肢のすべての指を欠くもの
 10 一上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの
 11 両下肢のすべての指を欠くもの
 12 一下肢の機能に著しい障害を有するもの
 13 一下肢を足関節以上で欠くもの
 14 体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの
 15 前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であつて、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
 16 精神の障害であつて、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
 17 身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であつて、その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの

10 3級はどの程度の障害?

就労に著しい制限を受ける程度の状態をいいます。具体的には、両目の視力が0.1以下、片手の3大関節のうち2関節に著しい障害、片足の3大関節のうち2関節に著しい障害といった状態です。

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 厚生年金保険法施行令別表で次のように定められています。詳細は障害認定基準をご覧ください。
 1 次に掲げる視覚障害
  イ 両眼の視力がそれぞれ 0.1 以下に減じたもの
  ロ ゴールドマン型視野計による測定の結果、両眼の1/4視標による周辺視野角度の和がそれぞれ 80 度以下に減じたもの
  ハ 自動視野計による測定の結果、両眼開放視認点数が 70 点以下に減じたもの
 2 両耳の聴力が、40センチメートル以上では通常の話声を解することができない程度に減じたもの
 3 そしやく又は言語の機能に相当程度の障害を残すもの
 4 脊柱の機能に著しい障害を残すもの
 5 一上肢の三大関節のうち、二関節の用を廃したもの
 6 一下肢の三大関節のうち、二関節の用を廃したもの
 7 長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
 8 一上肢のおや指及びひとさし指を失つたもの又はおや指若しくはひとさし指を併せ一上肢の三指以上を失つたもの
 9 おや指及びひとさし指を併せ一上肢の四指の用を廃したもの
 10 一下肢をリスフラン関節以上で失つたもの
 11 両下肢の十趾の用を廃したもの
 12 前各号に掲げるもののほか、身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
 13 精神又は神経系統に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
 14 傷病が治らないで、身体の機能又は精神若しくは神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するものであつて、厚生労働大臣が定めるもの

11 障害手当金とは何?

厚生年金加入期間中に初診日がある病気やけがが治ったときに3級に非該当で労働に制限を受ける程度の障害が残った場合、2・3級の障害厚生年金の2年分に相当する障害手当金を一時金として受けることができます。

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 障害手当金の受給要件は、①厚生年金の被保険者である間に初診日のある病気やけがが、初診日から5年以内に治ったこと、②その場合に3級には非該当の一定の障害が残ったこと、③国民年金被保険者期間中に保険料未納期間が1/3を超えないことです。
 障害手当金が支給される障害の程度は、労働が制限を受ける程度のものとして、厚生年金保険法施行令別表に定められています。詳細は障害認定基準をご覧ください。
 障害年金と異なり、病気やけがが治った場合に障害状態が判定され、該当すれば支給されます。なお、病気やけがが治らないで1年半が経過し、その段階で労働が制限を受ける程度の障害を有する場合は、基本的には、3級の障害厚生年金に該当します。
 障害手当金の額は、2・3級の障害厚生年金の2年分に相当する額です。2年分の額が障害基礎年金額の3/4の2倍に相当する額を下回るときは、この額(令和5年度は1,192,600円、ただし、68歳以上の者は1,189,000円)が最低保障額になります。
 なお、③については、厚生年金加入中も国民年金第2号被保険者期間であり、国民年金被保険者期間に算入されます。また、経過措置で、令和8年4月1日より前に初診日がある病気やケガについては、初診日前の1年間のうちに未納期間がなければよいことになっています。
 必要に応じ障害厚生年金の額はどのように決まるの?つい保険料を未納にしていたけど、障害年金は受け取れる?をご覧ください。

12 長期間(1年半以上)経過後に障害状態になった場合どうなる?

初診日から1年半経った時点では障害等級に該当していなくても、その後該当するようになったときは、本人からの請求に基づき請求時から受給権が発生します(年金の支給はその翌月分から)。

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 障害年金が支給される障害状態は病気やけがの後遺症の程度で判定します。従って、病気やけがが治った段階で、障害等級に該当しているかどうか、また、それが何級か判定されます。ただし、治療が長引くなどして症状が固定しない場合であっても、初診日から1年半経過した段階で判定が行われます。治った日か1年半経過した日を障害認定日といいます。
 障害認定日では障害等級表に該当していなくても、その後に該当するようになった場合を事後重症といいます。この場合の特徴は、受給権が請求によって発生するということです。通常の障害年金は障害認定日に障害等級表に該当することが受給権の発生要件です。このため、事後重症の障害年金は請求年金であるともいわれます。
 年金の支給は支給事由が生じた月の翌月から始まります。このため、事後重症の場合、請求をした翌月分からの支給になります。
 なお、事後重症で障害年金が支給されるのは、65歳になる前に障害等級表に該当するようになった場合に限ります。65歳からは老齢年金が支給されます。同年齢以降に事後重症になっても、障害年金は支給されません。

13 障害年金受給者が結婚するか子ができた場合年金額はどうなる?

障害基礎年金受給者に生計を維持する子が生じたときは、一定額の加算が行われます。1級か2級の障害厚生年金受給者が結婚し配偶者の生計を維持するときは、一定の加給が行われます。

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 配偶者と子で扱いが異なります。配偶者は障害厚生年金の加給年金の対象です。一方、子は障害基礎年金の加算の対象です。
 障害厚生年金に加給年金が加算されるのは、受給者が1級又は2級の障害の場合です。障害基礎年金はもともと1級又は2級に該当する場合に支給されます。従って、1級又は2級の障害厚生年金の受給者であれば、年金の出所は違いますが、扶養家族である配偶者か18歳以下の子(詳しくは、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか、20歳未満で障害等級の1級又は2級に該当する未婚の子)がいれば、年金額の加算が行われます。
 扶養家族かどうかは、生計を維持するかどうかで判断されます。生計維持は、同一の家計にあり、配偶者又は子の前年の収入が850万円未満か前年の所得が655万5千円未満であれば該当します。配偶者には、未届でも事実上婚姻関係と同様の事情にある者が含まれます。
 加算される額は、配偶者及び第2子まで1人当たり「224,700円×改定率」(令和5年度は228,700円、月額19,058円)、第3子以降は1人当たり「74,900円×改定率」(令和5年度は76,200円、月額6,350円)です。
 ちなみに、老齢厚生年金の加給年金には、配偶者の特別加算がありますが、障害厚生年金には特別加算はありません。

14 一度障害等級に非該当になったが再び該当した場合どうなる?

障害等級に該当しなくなると、支給停止されますが、再度該当すれば再開されます。また、他の病気やけがで他の軽い障害になり、以前の障害と併せて1級又は2級に該当するようになっても、支給停止は解除されます。

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 障害基礎年金受給者の障害の程度が1級又は2級に該当しなくなったとき、障害厚生年金受給者の障害の程度が1級、2級又は3級の障害に該当しなくなったときは、その間、それぞれの年金が支給停止されます。「その障害の状態に該当しない間」ですので、再度該当すれば再開されます。
 他の病気やけがで他の軽い障害になり、以前の障害と併せて1級又は2級の障害等級に該当するようになっても、支給停止は解除されます。
 なお、1~3級の障害の状態にない期間が3年を経過し、その時点で65歳以上であれば、障害基礎年金及び障害厚生年金の受給権は消滅します。

15 労災で障害状態になった場合どうなる?

障害の原因が労災の場合、障害基礎年金や障害厚生年金に加えて、障害補償年金などの労災保険法に基づく給付も行われます。ただし、労災保険の給付が本来の額より減額されます。

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 公的年金である障害基礎年金と障害厚生年金では、障害の原因が労災であるかどうかは問いません。従って、給付の額などが特段変わることはありません。
 他方で、障害の原因が労災の場合、労働基準法の規定に基づき、使用者責任で一定の補償を行わなければならない旨が定められています。労働者災害補償保険法は、この使用者責任を迅速・確実に履行するため設けられた制度です。累次の制度改正により労働基準法に定める補償内容よりも給付が充実しており、労災に関する社会保障制度として機能しています。労働者を使用する事業所に強制適用されますので、労災の場合は通常、この労災保険法による給付を受けることができます。
 労災で一定の障害状態になった場合は、労災保険法による障害補償年金(通勤災害の場合は障害年金)を受給できます。この障害について、公的年金の給付である障害基礎年金又は障害厚生年金を受給するときは、労災保険法による年金は、公的年金の種類に応じ0.73~0.88の調整率を乗じた減額されたものとなります。
 なお、労災保険法の適用がない場合(5人未満の農林水産業個人事業所での労災など)は、労働基準法による障害補償をうけることができますが、この場合には、公的年金からの給付である障害基礎年金及び障害厚生年金は6年間支給停止されます。

16 老齢年金も受給できるようになった場合どうなる?

障害年金と老齢年金は同時に受給できませんので、どちらかを選択します。ただし、障害基礎年金を受給しながら老齢厚生年金を受給することは可能になっています。

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 公的年金では同一人が支給事由の異なる2つ以上の年金を受けることができるときは、いずれか1つを選択して受給します。これを「1人1年金の原則」といいます。
 障害年金と老齢年金は、この原則に基づき、同時に受給できません。どちらかを選択します。例えば、障害基礎年金と障害厚生年金を受給している方が62歳(女性)又は64歳(男性)になり特別支給の老齢厚生年金を受けることができるようになったときは、引き続き障害基礎年金と障害厚生年金を受給することは可能ですが、これに代えて、特別支給の老齢厚生年金を受給するという選択肢もあります。
 ただし、この原則の例外として、障害基礎年金を受給しながら老齢厚生年金を受給することは可能になっています。この場合の老齢厚生年金は65歳から支給される本来支給のものです。
 障害年金は非課税のため障害基礎年金の方が老齢基礎年金より受給者にとって有利です。一方、障害状態になった後も就労して厚生年金保険料を納め、障害状態になる以前と比べ標準報酬額が高くなったり、加入月数が300月を超えることがありえます。その場合、それに見合う老齢厚生年金の受給権を取得できないのは不合理です。そこで、障害基礎年金の受給は継続しつつ、障害厚生年金でなく老齢厚生年金を選択することが可能になっています。
 ちなみに、類似の理由により、障害基礎年金を受給しながら、遺族厚生年金を受給し、あるいは、老齢厚生年金と遺族厚生年金を受給することも可能になっています。