その他のよくある質問について

年金は払った分だけ戻ってこないから損?

そんなことはありません。法律上、基礎年金の半分は国庫負担、厚生年金の半分は会社負担です。これほどお得な制度はありません。そもそも、損得ではなく、いざという時に備えた保障があることに意義があるのです。

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基礎年金の半分は国庫負担、厚生年金の半分は会社負担、このことが法律上に定められています。すなわち、普通に貯蓄などで老後に備える場合と比べると、半分の負担で済むことが規定されています。
しかも、税制上も優遇がされています。障害年金や遺族年金は非課税ですし、老齢年金にも公的年金等控除があります。公的年金の保険料は全額が社会保険料控除(事業主負担分は全額が損金算入)になります。金融商品でこのように有利なものはありません。
ただし、そのような損得だけで公的年金の加入の是非を考えるべきでは、そもそもありません。公的年金は、「国民の生活の安定が損なわれた場合に、国民にすこやかで安心できる生活を保障することを目的として、公的責任で生活を支える給付を行う」(社会保障制度審議会「社会保障将来像委員会第1次報告」(平成5年))という社会保障の一環です。
公的年金は、老齢、障害、死亡に関して国民生活の安定を図るための制度です。そのようないざという場合に備えた保障があることで、安心して生活を送ることができます。
老齢年金に例を取っていうと、高齢者は一般に働いて収入を得ることが困難です。少子高齢化が進み、家庭の扶養機能が低下した今日の日本で、仮に公的年金がなければ、高齢者の多くが貧困に陥ることを余儀なくされると考えられます。そのような社会は不安定化する恐れが強く、放置すると大きな社会的混乱を招きかねません。従って、年金の仕組みは今日の日本では不可欠です。
このように考えると、公的年金の意義は、個人の損得をはるかに超えたところにあることが分かります。国民皆年金に積極的な気持ちで参加したいものです。

年金は将来破たんする!?

物騒な言葉を安易に使うべきではありません。年金が全く受給できなくなることはありません。経済の低成長が続くと積立金が枯渇する可能性はありますが、その場合でも完全賦課方式で一定の年金は支払われます。

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年金の危機を煽り立てる言説が、マスコミ、ジャーナリスト、一部政治家などから発せられることがあります。しかし、その多くが、誤解によるか、そもそも根拠があいまいです。
これは、それだけ年金が国民の生活に頼りにされていることの反面でもあります。年金の危機を訴えれば、他のテーマで訴えるのと比べて、注目され、「売れる」のです。すなわち、視聴率、購買部数、知名度のアップが目的であることが多いのです。しかし、このような態度は、国民の公的年金に対する信頼を土足で踏み台にして、自己の利得を図ろうとするものであるといっても過言ではありません。
破たんというのは、物騒な意味合いの言葉ですが、その定義が明確ではありません。それを安易に使うことは、こういったマスコミ等と同じ姿勢につながります。
平成26年財政検証では、経済状況の低迷が続くと、将来積立金が枯渇する可能性が示されています。その場合は、完全賦課方式に移行するとされています。ただし、法律上は、5年以内に所得代替率が50%を下回ることが見込まれるに至った段階で、政府は、給付と負担のあり方について検討を行い、所要の措置を講ずることが規定されています。
これまでも、人口や経済状況の変化などを踏まえ、給付と負担に関係する様々な制度改正が行われてきました。しかし、そのことをもって、年金が破たんしたことにはならないでしょう。これからも制度改正は続くと考えられます。マスコミ等の情報の受け手である国民には、年金に対する正しい知識をもって、冷静かつ建設的に対処することが求められます。

年金の重圧で日本経済は大きな悪影響を受ける?

そのようなことはあまり考えられません。マクロ経済スライドによって今後年金の給付水準は徐々に低下していくため、GDPに対する年金給付費の比率はむしろ若干低下していくと見込まれています。

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年金は社会保障の中で最大の支出項目です。平成27年度の社会保障費用統計によると、部門別社会保障給付費中「年金」は54.9兆円で給付費全体の47.8%を占めています。
日本では世界に類を見ない少子高齢化が進行中です。このことから、年金の給付費はこれからも増大し、日本経済に大きな重圧となるのではないかと不安に感じるのは、一般的な感覚としては、理解できるところです。
しかし、実際にはむしろ逆の方向であることが見込まれています。マクロ経済スライドによって今後年金の給付水準は徐々に低下します。
厚生労働省が平成24年3月に行った将来推計によると、年金の給付費は、平成27年度の56.5兆円が、平成37年度には60.4兆円となりますが、対GDP比では、平成27年度の11.1%が平成37年度には9.9%へと低下することが示されています。また、保険料は上限が固定されることから、負担の対GDP比は、平成27年度も37年度も、9.5%で変わりません。
詳しくは、厚生労働省資料「社会保障に係る費用の将来推計の改定について(平成24年3月)」をご覧ください。

積立方式にすれば年金は心配なくなる?

賦課方式の年金を積立方式にするには、現在の高齢者分と将来の自分の分を負担する必要があります。また、積立方式は経済変動の影響を受けやすく、長い時間軸の中では実質的な価値の低下が生じえます。

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賦課方式は、各年度の給付をその年度の保険料などの収入で賄う財政方式です。積立方式は、将来の給付に備えてお金を積み立てる財政方式です。
歴史的には、積立方式でスタートした年金が徐々に賦課方式に移行していくことは、どの国でもよく見られます。第2次大戦直前にスタートした日本の厚生年金も、当初は積立方式でしたが、終戦後のインフレで壊滅状態になり、昭和29年に、新たに低い保険料率で再スタートしました。保険料率は徐々に引き上げることが予定されましたが、将来必要な保険料率は法定されませんでした。低い率でスタートしたという意味では、賦課方式に近い形になったということができます。
現に賦課方式の年金が実施され、各年度の給付に必要な保険料を納めている状況の中で、それを積立方式に変更しようとすると、現在の老齢世代のための負担をしながら、将来の自分のために積み立てるための負担もしなければならなくなります。これを、二重の負担といいます。負担が急増することから、実際にはなかなか困難ではないかと考えられます。
また、仮に積立方式にしても、必ずしもそれで将来が安心ということはありません。積立金は、賃金や物価が上昇したり、株価が下落したりすると、その分減価します。日本も、敗戦という特別の事情によるとはいえ、せっかくの積立金が無意味になった経験を経ています。
結局、賦課方式にせよ、積立方式にせよ、時々の経済的成果の一部を年金に振り向けるものであるということができます。積立金があることで余裕をもった運営が可能ですが、根本的には、安定的な経済環境が、年金の持続性にも必要なのであり、財政方式によって持続性が左右されるというものでは、基本的にはないのです。

年金は巨額の債務超過になっているといわれるけど、大丈夫?

過去の保険料とそれに対応する給付だけで評価すると、そう見えますが、将来の保険料対応分も含めると、必ずしも債務超過ではありません。労働参加が促進されれば、長期的に、支出に見合う収入が確保されます。

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年金財政について、従来は、5年ごとに財政再計算を行い、最終的に必要と見込まれる水準に向かって保険料(率)を段階的に引き上げていく段階保険料方式が採られていました。
この時代には、必要と見込まれる水準の保険料(率)は法定されていませんでした。従って、過去の保険料とそれに対応する給付だけで評価すると、必要な保険料が確保されておらず、巨額の債務超過のように見えたのも、当然といえます。
ただし、現在の年金制度は、それから大きく変わっています。平成16年の改正で、将来の保険料(率)の上限をあらかじめ法定し、その範囲内で給付を賄う方式に改められました。そして、将来の給付水準を調整する仕組みとして、マクロ経済スライドが導入されました。
また、財政再計算に代わって、5年ごとに財政検証が行われることになりました。直近の財政検証は平成26年財政検証です。
この結果を見ると、人口が出生も死亡も中位推計で推移する場合、労働参加が促進される経済前提のもとでは、将来にわたって、年金財政の持続性のメルクマールである、モデル年金における所得代替率50%が確保されることが示されています。すなわち、労働参加が促進される限り、長期的に、支出に見合う収入が確保されることから、債務超過とはいえません。
しかし、一方で、労働参加が促進されなければ、いずれ50%を割り込むことも示されています。この場合は、50%を法定下限とする現行制度のままでは、いずれ債務超過に陥ることになるということができます。
なお、法律上は、5年以内に所得代替率が50%を下回ることが見込まれるに至った段階で、政府は、給付と負担のあり方について検討を行い、所要の措置を講ずることとされています。

いずれ保険料を払わなくてよい税方式になる!?

税方式では給付と負担の関係が断ち切られ、所得制限などがかかりやすくなり、受給権が脆弱化します。巨額な財源が必要なことから実現性は薄く、仮に導入されても過去の納付記録が無視されることは考えられません。

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基礎的な年金給付については、社会保険方式を採らず、税を財源にすることは、諸外国にも例はあります。従って、税方式の年金が不可能とまではいい切れません。基礎年金の1/2は国庫負担ですから、見方によっては、日本の基礎年金は1/2税方式であるともいえます。
税は年金その他の社会保障だけではなく、教育、公共事業、治安維持、国防など様々な行政需要に充てられます。これに対し、年金の保険料は年金の給付だけに充てられます。
従って、税方式にすると、給付と負担の関係が断ち切られます。貴重な税を使うのだから必要な人だけに給付すればよいとの考え方から、所得制限などがかかりやすくなります。これは、負担に見合った年金を受けられる現在の仕組みと比べると、所得があると年金が減るか受けられなくなることを意味します。所得制限の基準は政府の財政状況などに左右されやすく、それだけ受給権が弱体化するとも考えられます。
税で賄うには、それに見合った税財源が必要です。基礎年金に対する国庫負担割合は、今日では1/2ですが、従来は1/3でした。平成16年の年金制度改正で、平成21年度から1/2に引き上げられることが法定されました。しかし、このための安定的な財源がなかったことから、当面はつなぎ国債(年金特例公債)などで賄われました。平成24年の社会保障・税一体改革において、消費税率が5%から8%に引き上げられるのに伴い、ようやく国庫負担割合1/2が恒久化したという経緯があります。全額国庫負担にするには、巨額の税財源が必要になり、今日の政府の財政状況では、実現性は薄いといわざるを得ません。
なお、仮に全額税方式が導入されるとしても、導入後の負担方法が変わるということにすぎません。過去の納付記録が無視されることは考えられません。

未納者がいるから年金財政は悪化する?

未納者はその分だけ自分の将来の年金額が減少します。つまり将来の現役世代の負担を軽くすることにつながるので、未納が年金財政を悪化させる要因にはなりません。低年金にならないようにしっかり納めましょう。

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厚生労働省・日本年金機構による「公的年金制度全体の状況・国民年金保険料収納対策について(概要)」「平成28年度の国民年金の加入・保険料納付状況について」によると、平成26年度において、公的年金加入対象者全体でみると、未納・未加入者数は、公的年金加入対象者の3%程度です。
国民年金保険料については、平成28年度の現年度納付率(同年度における納付対象月数に対する納付月数の割合)は65.0%、平成26年度の最終納付率(同年度分の保険料として納付すべき月数に対し、時効前(納期から2年以内)までに納付した月数の割合)は72.2%になっています。
基礎年金の額は保険料納付月数に比例します。未納であればその分だけ年金の額は少なくなります。年金財政としては、未納者が高齢期になると、年金として支給する額が少なくて済みますので、支出の減少要因です。このため、現役から集める保険料も少なくて済みます。従って、未納が年金財政を悪化させることには、基本的にならないのです。
ただし、未納のままで高齢期を迎えた人は、年金を受け取れないか、少ない額の年金しか受け取ることができず、厳しい老後生活を余儀なくされるおそれがあります。未納は、年金財政ではなく、自身の老後生活を悪化させることになるのです。
そればかりか、生活保護費用を増大させることにもなりかねません。この場合は、国や地方公共団体の財政を悪化させる要因になります。

少子高齢化で後の世代ほど損する?

少子高齢化だけで年金の給付水準が決まるわけではありませんが、賦課方式の年金では、支え手と受給者の比率が低下すると、負担が一定なら給付水準は低下せざるをえません。少子化対策の充実が望まれます。

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年金は、時々の経済的成果の一部を受給者に振り向ける仕組みです。従って、少子高齢化だけで年金の給付水準が決まるわけではありません。資本の充実や技術革新が進めば、後の世代が高い水準の年金を受給することは可能と考えられます。
その上で、以下、年金の財政方式に限っていうと、現行の公的年金は、各年度の給付をその年度の保険料などの収入で賄う賦課方式によっています。給付を受ける受給世代と、保険料を負担する現役世代の均衡がとれていれば、将来にわたって安定的に年金制度を運営していくことができます。しかし、年金の支え手と受給者の比率が低下すると、負担が一定なら、その範囲内で賄うことができる年金の給付水準は低下せざるをえません。パイの大きさが小さくなり、分け合う人数が多くなれば、1人1人の取り分は少なくなるからです。世界に類を見ない少子高齢化が進む日本は、まさにそのような状況にあります。
実際にも、マクロ経済スライドによって、実質的な給付水準は徐々に低下しています。これは、個々の受給者にとっては、年金の受取額が後になるほど低くなることを意味しています。
少子高齢化が進む以上、年金制度としては、これはやむを得ない対応です。根本的には、少子化の進行という、年金の支え手が減少し続けるところからくる問題です。
ただし、後の世代ほど損をする、すなわち、払った保険料に比べて受け取る年金額が後の世代ほど少なくなるとはいい切れません。今日の少子化の状況がずっと続くとは限らないからです。少子化の状況が改善されれば、そのときに現役の世代の年金の受取額は増大します。
少子化は、年金だけでなく日本の社会経済全般にわたる重要な課題です。この対策が進むことは、年金の持続性にも寄与することになります。

年金積立金の運用は安全なの?

運用は安全かつ効率的に行うよう定められており、分散投資が行われています。一定のリスクを取る必要があることから短期間では運用成績に高低が生じますので、長期的に見ていく必要があります。

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国民年金と厚生年金の積立金は、法律に基づき、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用を行っています。GPIFにおいては、安全かつ効率的な運用を目指して、国内債券、国内株式、外国債券、外国株式に分散投資を行っています。そのため、これらについて長期的に維持すべき資産構成割合を基本ポートフォリオとして定めるとともに、信託銀行や投資顧問会社に委託して、運用をしています。
資金運用においては、リスクとリターンが表裏一体の関係にあります。投資でリターンを得るには、一定のリスクを取る必要があります。一般にリスクが高いものほど期待リターンが高いことから、債券だけでなく株式にもある程度投資します。
ここにリスクとは、通常は価格が市況によって変動することをいいます。分散投資により、個々の債券や株式の価格変動が均され、ポートフォリオ全体としては変動の程度が抑えられます。このことから、ポートフォリオ運用においては、分散投資が安全性を確保する重要な手段になります。
分散投資を行っても、ポートフォリオを構成する個々の債券や株式の価格が市況によって変動することには変わりありません。運用成績は時価で評価することから、短期的には運用成績に高低が生じます。マイナスになることも珍しくありません。
運用成績がマイナスになると、損失が出たように見えますが、それはこのような市況の変動を反映したものです。経済が成長する限り、長期的には株価水準は上昇していくと考えられます。短期間の高低ではなく、長期的に見ていく必要があります。

年金積立金が株価対策に使われる!?

株価の上昇は積立金の運用にとってプラスの効果がありますが、それは長期的・持続的なものである必要があります。短期的な値上がりを求め、相場の材料視するようなことは、本末転倒であり、あってはなりません。

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国民年金と厚生年金の積立金は、法律に基づき、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用を行っています。GPIFにおいては、安全かつ効率的な運用を目指して、国内債券、国内株式、外国債券、外国株式に分散投資を行っています。そのため、これらについて長期的に維持すべき資産構成割合を基本ポートフォリオとして定めるとともに、信託銀行や投資顧問会社に委託して、運用をしています。
株式も運用対象ですので、株価が上昇することは積立金の運用にとってもプラスの効果があります。ただし、年金の資金運用は、今日ではなく、将来の年金給付に必要な財源を生み出すことが主目的です。従って、株価の上昇は経済成長を反映した長期的・持続的なものであることが必要です。短期的に値上がりすると、短期の運用成績の向上にはつながりますが、それが長期的・持続的なものにならなければ、意味はありません。
GPIFにおいては、平成26年10月に、国内株式の割合を12%から、外国株式の割合を11%から、それぞれ25%に引き上げる基本ポートフォリオの変更を行いました。株式の投資割合が増えることから、これを相場の材料視するような見方が証券関係者の間で見られました。しかし、これは本来の長期的・持続的な株価の上昇とは真逆の、短期的な値上がりによる利益を求めるものであり、年金の資金運用の立場から見ると本末転倒です。このような観点から、GPIFの運用に期待することは、あってはならないことです。

支給開始年齢が65歳からさらに引き上げられる?

現在そのようなことは予定されていません。ただし、日本は世界に類を見ない少子高齢化が進んでいることから、今後そのことについて検討される可能性はあると思われます。その際は冷静な議論が望まれます。

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現在は、厚生年金について、支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられる途上にあります。
65歳を超えてさらに年齢を引き上げていくことは、現在のところ予定されていません。しかし、日本より高齢化率の低い欧米諸外国でも、67~68歳に引き上げる例が多く目につくようになりました。日本でも、65歳という年齢をさらに引き上げることについて、今後検討される可能性があると考えられます。
その理由の第1は、年金財政の持続性確保です。平成26年財政検証においては、今後日本で労働参加が進まなければ、年金財政の持続性のメルクマールである所得代替率50%を長期的には維持できないことが示されています。支給開始年齢の引き上げは、この未然防止になります。
第2は、年金給付水準の向上です。今後マクロ経済スライドにより給付水準は徐々に低下します。これに対し、年金の受取りを遅らせると増額される仕組みがあります。今は任意の仕組みですが、これを標準にすることが考えられます。
第3は、日本人が「若返っている」ことです。かつて60歳台後半というと、杖をついた腰の曲がったおじいさん・おばあさんが多かったのですが、今そのような人はほとんどいません。十分に現役として活躍できる方が多くなっています。
その活躍を年金受給年齢が阻害している可能性があります。まだまだ活躍できる方が、年金受給年齢を理由に退職を余儀なくされるとすれば、社会的にも大きな損失です。
年齢の引上げは、しっかりとした国民的合意が前提です。また、年金受給を間近に控えた方には大きな影響があります。十分な理解が得られるよう余裕をもって行う必要があります。
日本は諸外国に類を見ない少子高齢化が進んでいることから、実はあまり悠長に構えている余裕はないのです。この課題について、冷静かつ積極的な議論が進むことが望まれます。

マクロ経済スライドはデフレでも発動されるようになる?

物価や賃金の伸びがマイナスのときは、マクロ経済スライドは行われません。このようにデフレでは発動されませんが、平成30年度からは、発動されなかった分をその後物価や賃金の上昇時まで持ち越して調整します。

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マクロ経済スライドは、著しい少子高齢化が進む中でも年金の持続性を確保するため、年金の給付水準を調整する仕組みです。ただし、物価や賃金の伸びがマイナスのときは、年金額の改定に当たってマクロ経済スライドは適用されません。このため、平成16年の年金制度改正で導入以来、デフレ経済のため、平成27年度の年金額改定まで、発動されませんでした。
しかし、調整期間が後にずれるほど、将来調整に必要な割合は増大し、結果的に将来世代の年金額が一層低下することになります。そこで、物価や賃金がマイナスのデフレ経済下でも、マクロ経済スライドを行うべきではないかという考え方が、多方面から示されました。
このため、平成26年財政検証のオプション試算の1つに、このことが含められました。その結果、年金財政の持続性を高める効果があることが示されています。
けれども、物価や賃金の伸びがマイナスのときにさらにマクロ経済スライドを行うと、物価・賃金のマイナス以上に年金額を引き下げることになり、一般の理解が得られない可能性があります。一方で、調整はできるだけ早く行う必要があります。
そこで、デフレ下で見送った分をその後物価や賃金が上昇した時まで持ち越し、キャリーオーバー分として、その時に調整することにする法律改正が、平成28年12月に成立しました。平成30年4月から施行されるため、平成31年度以降の年金額の改定からこのルールが適用されます。
必要に応じマクロ経済スライドって何?をご覧ください。

非正規雇用の厚生年金適用が一層拡大される?

平成28年10月から、従業員501人以上の企業の短時間勤務者へ適用が拡大されました。さらに、平成29年4月からは、500人以下の企業でも労使合意があれば適用できることになりました。

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同一の事業所の一般の従業員と比べて、1日当たりの勤務時間や1月当たりの勤務日数が3/4未満の場合は、原則として厚生年金は適用されません。
ただし、平成28年10月から、一部適用が拡大され、従業員501人以上の大企業においては、1週間の労働時間が20時間以上、賃金月額が88,000円以上(年収106万円以上)、勤務期間が1年以上見込まれる場合は、学生である場合を除き、厚生年金・健康保険が適用されるようになりました。
さらにこれを拡大すべきではないかという考え方が、多方面から示されました。そのため、平成26年財政検証のオプション試算の1つに、このことが含められました。その結果、年金財政の持続性を高める効果があることが示されています。
オプション試算では、一定の基準を置いてそれに該当する労働者に適用するという前提で、試算が行われています。しかし、500人以下の小規模企業では、事情は様々に異なることが考えられます。
そこで、平成29年4月から、500人以下でも労使合意がある場合は、適用を拡大できることになりました。

国民年金加入期間が40年から45年になる?

国民年金保険料の納付年数の上限を40年から45年に延長し、基礎年金が増額するよう、財政検証のオプション試算が行われました。しかし、国の財政負担増になることから、当面難しいと考えられているようです。

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現在のところ、国民年金は20歳~59歳の方に強制適用されています。40年間保険料を完納して満額の老齢基礎年金(月額6.5万円)を受給します。
しかし、今後マクロ経済スライドにより、年金の給付水準は徐々に低下していきます。また、60歳を超えても働く人が増えていることも事実です。
そこで、高齢期の就労による保険料拠出がより年金額に反映するよう、納付年数の上限を45年に延長し、基礎年金が増額するようにすべきではないかという意見があり、財政検証のオプション試算の1つに含められました。
その結果、年金財政の持続性を高める効果があることが示されています。しかし、老齢基礎年金の年金額を増額することは、その1/2が国庫負担であることから、政府の財政支出の増額要因にもなります。現下の国の財政事情では、新たな税財源がない限り、直ちにこの対策を実施することは困難であると考えられているようです。

1階の基礎年金と2階の厚生年金が統合される?

以前からそのような構想を主張する意見があります。全制度の統合は1つの理想には違いありませんが、公平な所得捕捉や保険料賦課ベースの統一など根本的な問題があります。長期的な課題というべきでしょう。

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厚生年金と共済年金という被用者年金については、平成27年10月に統合されました。
さらに、1階の基礎年金と2階の厚生年金を統合すべきではないかという意見があります。これは、現在は国民年金と厚生年金という2本の法律に分かれている制度を、1本のものにしようというものでもあると考えられます。
全制度の統合は1つの理想には違いありません。しかし、定額保険料の国民年金と報酬比例保険料の厚生年金とでは、保険料賦課のし方が異なります。国民年金第1号被保険者の間でも所得格差がありますので、所得比例保険料の方が望ましいと考えられますが、現実には、第1号被保険者の所得捕捉が十分でないことから、かえって不公正を助長してしまう可能性があります。
また、厚生年金は労働の対償として受け取るすべての収入に賦課されます。一方、第1号被保険者である自営業者にとっての収入は、いわば売り上げに当たるものであり、これに賦課することが適切かどうか、また、第1号被保険者には様々な態様の人々が含まれますので、共通の賦課基準がそもそも設定できるか、などの課題が考えられます。
これらは税制にも絡む根本的な課題です。直ちに解決することは容易ではありません。従って、全制度の統合は、当面、長期的な課題として引き続き議論を重ねていくべきものと考えられます。