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わかりやすい年金のお話 1-(4)
第1章 「年金」は複雑でわからない?
 第4節 確定給付型から 確定拠出型への流れがあるの?

2019.01.30コラム

勉(研究員):日本の人口が減るなかで労働人口も減ってくる時代になって国の公的年金の支え手が少なくなってきたので、厚労省が5年に一度行う公的年金のいわば健康診断といえる財政検証では、労働参加率が向上しないと公的年金だけでは現役時代の所得の半分を下回りかねない状況になってきているんだ。そこで三階部分の企業年金制度により大きな役割が期待されるようになってきている。その為、厚労省は国民全般に関係が及ぶような改革を相次いで打ち出しているんだ。

剛(編集者):年金制度全体の三階部分の私的年金にも色々あるんだろう?企業年金制度にも確定給付企業年金(DB)と確定拠出年金(DC)の二つがあるらしいじゃないか。

勉(研究員):そもそも企業年金制度というのは我が国でも半世紀以上もの長い歴史があるわけだけれど、公的年金が「世代間の支え合い」という考え方で運営されてきたのに対し、企業年金は全く違うんだ。自分が老後にもらう年金額が確定しているタイプと自分で掛金の運用を考えるので老後になったら年金額がいくらになるかは相場次第というタイプと大きく分けて2つあるよ。前者を確定給付企業年金(以下DB)、後者を確定拠出年金(以下DC)というよ。昔は退職一時金の外には年金給付が確定しているDBばかりだったので、民間サラリーマンや公務員にとっては勤務先が用意する福利厚生パッケージの一環と見られていたよね。自分が意識していない間に従業員の老後の為に雇い主がこのようなDBを用意してくれているのはありがたいと思わなければいけないよ。

花子(ライター):最近聞いた話だけれど二郎の大学時代の同期が務めている会社では来年度からDBへの加入が認められず、DCだけになるという話だけど、それはどうしてなの?

勉(研究員):それはね、これまでの日本の企業では新卒採用・終身雇用で、長期雇用優遇の人事制度が一般的だったよね。ところが最近の企業の人の動きを見ているとロボット、AIなどの活用によって人の流動性が高くなっているという説もある。実際に新卒採用で定年までという人より20代、30代で入社し、またすぐ辞めてしまう有能な人材が増えているね。つまり長期雇用優遇の人事制度が現状にそぐわない状況になってきたんだ。企業年金制度も人事制度の一部だから、これまでは勤続20年超えると退職金カーブが急上昇するのが一般的だったけれど、そんなに長く勤める人は減ってきている。他方、リーマンショックで株価が急激に下落した時もあったし、すう勢的に金利低下によって負債評価額が増えてきている。DBの積立比率と言って、確定している給付を守るために積んでおかなければならない資産額が負債に対して不足して、それを埋め合わせるために母体企業では多額の追加拠出金の負担を強いられてきたという会社が結構ある。つまりDBを維持していくのは経営にとっての重荷になっているんだ。
だから図を見ると明らかなようにDBとDCの加入者数の割合の推移をみるとDBが下がってDCが一方的に増えているのが分かる。



花子(ライター):でもそういう企業ばかりでもないわ。投資運用に全く知識や経験のない従業員にいきなり、「来月からは自分の年金額を確定給付企業年金で定められていた額より増やすためには、この率を上回るように運用しましょう」なんて言われても素人には無理よ。

勉(研究員):うん、確かにそういう声は経営者の中にもあって、だから一方的にDBからDCへの流れがある、というのは言い過ぎで日本では米英に比べれば、DCが増えていると言ってもそれほど極端と言えるほどでもないよ。

剛(編集者):でもうちの会社でもDCに移行するなんていうことになったら自分にも関係してくるのかな?

勉(研究員):もちろんだ。お宅のような中小企業でDBを維持し続けるのは経営リスクが大きすぎるんだから、いつDCに移行してもおかしくないよ。

剛(編集者:DCに変更すると何が変わるんだい?

勉(研究員):何も知らないおめでたい奴なんだな、大違いだよ。これまでは給料からの社会保険料の天引きが多くて手取りが減ると居酒屋で文句を言っていれば済んでいたのに、これからDCに移行することになったら、会社からはの分の確定拠出年金の保険料は出してもらえるけれど、これまで見込んでいた年金がもらえるかどうかはの運用次第になるんだよ。

剛(編集者):ひぇー、それは大変だな、投資運用に熱心な奴なんて「金儲けに執着する人間」というレッテルを貼っていたのに、自分もその連中と投資教育なんてわけの分からない勉強を一緒にしないといけないのか、それはこの年になると心が重いよ…